プロローグ
9月の中ごろ、暦は秋のはずなのに天気予報の最高気温はまだまだ30度越え。今年の夏はおかしいぞ…と思っているうちに俗にいう1回目の「シルバーウィーク」がやってきました。
今回は思いがけず金曜に休みをとることができたので、宿泊で「ツールド×旅」に出られる条件だけど、奇しくも台風の接近で土~月の天候はすこぶる怪しい。
しかし、私も自転車旅人として、いざというとき(?)のために、あらゆる条件下のプランを持ち合わせています。木曜の夕方、頭の中のスーパーコンピューターが瞬時にはじき出したのが以下のプラン。
今回目指すのは、四国の霊峰「石鎚山」。緑の稜線が美しいといわれる【UFOライン】が目標です。
残暑がキツイとはいえ、ここまで登ると涼しいはず!
理屈の上では100m上昇ごとに0.5℃下がるといわれているので、20℃台前半を想定してのロングライドなので、この時期にうってつけのコースです。きっと。
ということで、金曜ライドを中心した「現地日帰り&船中2泊」の弾丸旅が始まります!
オレンジフェリーに乗船
思いついたら即行動。仕事が終わって輪行袋を担いでJRに乗り込む私。この行動力には我ながら感心します。(笑)
大阪南港に停泊する「オレンジフェリー」は22時出航。平日の仕事終わりでも余裕をもって乗れるのは本当にありがたい。
もう何度も乗船しているので、勝手知ったる船内。
完全個室化されている快適な移動式ホテルには「船内売店がない」という唯一のウィークポイントがあるので(自販機はあり)フェリーターミナル近くのコンビニで晩酌アイテムと翌日朝食を買い込んでおくのがポイントです。
船内の大浴場でさっぱりしたら、フリースペースで晩酌を楽しみながら翌日のルート組みをしましょう。毎度のことですが、目的地以外ほぼノープランで出発して移動中に旅のイメージを組み立てるこの時間がとても好き。
翌朝5時に起床。船内泊の特権である朝風呂で頭と体をすっきりさせ、買っておいた朝食を済ませたら、6時に愛媛の東予港に到着です。
平日便ですが私のほかにも数名のローディーが乗船していた模様。どうやらみなさん「しまなみ海道」を目指すみたいですね。
東予港フェリーターミナルからは、悠々とそびえる四国山地と霊峰「石鎚山」が見渡せます。今日はあの稜線まで駆け上がるのだとおもうと身が引き締まります。
雲間から差す光が神々しい。さすが霊峰、と言わざるを得ない説得力。
西条のヴェネツィア
スタートして、まずは寄り道。
というのは、港のすぐそばに「西条のベネツィア」と呼ばれる場所があるらしい…。実は、大好きな番組である「出川哲朗の充電させてもらえませんか」で知ったので立ち寄ってみたかったのです。
西条市は、石鎚山の伏流水による水路が発達した「水の街」。ヴェネツィアエリアは河口に近い農地の水路の合流点。
早朝はあいにくの曇りでしたが、水辺に映える集落の風景が美しい。これで空が晴れ渡っていれば水面に青空が反射してさらに素敵な風景が見られるのでしょうね。まあ、「ヴェネツィア」という例えには少々無理があるけれど、「日本の美しい水路」でした。(笑)
それではここから正規ルートにもどって山のすそ野をゆっくり目指しましょう。
石鎚山の麓にて
途中「JR石鎚山駅」をまたぐのですが、ちょうど通学時間で高校生が駅に集まってきていました。地方の小さな駅舎の寂れた光景はよく目にしますが、通学の学生さんがいる日常のにぎわった光景を見ることはほとんどないので新鮮でした。
目の前には「石鎚神社」の大鳥居。この先に本殿があるのですが、山岳信仰の地である石鎚山には山の中腹・頂上にもそれぞれ別の御社があるようです。
石鎚山ルートにおける、大切な「補給」の話
輪行の都合上、走り出しはボトルが空っぽ状態なので、本格的なスタートの前に西条市内のコンビニに立ち寄って補給食とドリンクの購入が必要です。あと、船内で気づいたのですが、サングラスを家に忘れてきちゃいました。裸眼で丸一日ライドというのも過酷なので、補給ついでにこちらも購入しないといけません。
コンビニ補給については自身の「夏パターン」を構築しています。体質的に体温調整と水分調整が苦手なので、私なりの熱中症対策がこちら。
まず、基本となるのはダブルボトル。一方は700mlボトルで、これに1Lのスポーツドリンクを購入して補充。あまった300mlはその場で飲んで体内保水。もう一方は500mlの保冷ボトルで、これには1kgのロックアイスを購入し氷のみを入れておきます。チャック付きの袋なので余った氷はサドルバッグへ。これが走行中にとけて冷水になってくれるので体温調整にも一役買ってくれるという寸法。なにより氷の使い勝手がいいのと、ボトルとは別に水分のストックを置いておけるというのは心強い。のべ1,7Lの水分を確保できるこのパターンおすすめですよ。
あと、補給食としては1,000kcalを目安にしています。今回は「朝バナナ」のゼリーパック、「カロリーメイト」を2箱、そして「森永のラムネ」を買っておきましたが、結果としてこれは少なすぎた。今回の石鎚山ルートには補給箇所がほぼなかったので、出だしのコンビニ補給は非常に重要です。UFOラインを目指す方は、スタート時に1日分のエネルギー確保(約2,500kcal)を見積もって補給をしておきましょう。
ちなみに、現地のコンビニにサングラスは置いていませんでした。というオチ。この先々でアイウェアの重要性を嫌というほど思い知ったのでした。思い付きで旅に出たものの詰めが甘かった…。
国道194号線「そらやま街道」を往く
谷川沿いにある国道194号線、別名「そらやま街道」が今回のメインルート。高知県との県境で林道に入るまではこの道を上っていくことになります。
四国の川の美しさは格別で、吉野川流域の「大歩危・小歩危」や仁淀川の「仁淀ブルー」、最後の清流「四万十川」などは全国的にも有名ですね。これらには四国の中央を貫く四国山地の山々に磨かれた水という共通点があるのですが、この「そらやま街道」と並走する「谷川」の水も麓地点でこれだけ綺麗。「谷川ブルー」でもいいんじゃないでしょうか。関西ではこの澄んだ感じはあまりお目にかかれません。
今回は総行程150kmくらいで標高も1,600mまでは登るわけだから無理は禁物。スローペースで脚への負荷をできるだけかけずに、ゆっくり登っていきます。ところで「忘れなベルト」とは…愛媛の方言でしょうか??
気づけば「もうじき高知県」らしい。愛媛ライドの頭でいたけれど、地図を見ると高知県までしっかりかぶっているようです。高知県は旅ライド未踏の地なので、これは嬉しい誤算。また白地図がひとつ塗りつぶされました。
なんだかんだで20km以上淡々と登っているので疲れもでてきました。サングラスを忘れて晴天中の裸眼ライドというのも地味に効いているような感じ。なにかリフレッシュできるポイントはないかな…とおもっていたら「水汲み場」を発見!石鎚山に磨かれた伏流水のようです。軽トラのおじさんが水筒に詰めているので間違いない。
ということで、ここで休憩。ちょうど空っぽになった1本目のボトルに水を入れて飲んでみると…おいしいっっ!水道水とは違うまろやかな感触。気分の問題もあるでしょうが、山の水が体をリフレッシュしてくれる感がすごい。ついでにジャージにも水をかぶって体も冷却しておきます。
この「水汲み場」、GoogleMAPにもピンが落ちていますが、UFOラインまでの実質最後の補給場所です。これから行かれる方は、くれぐれもここでボトルを満タンにして先へ進んでくださいね。
まさかのトンネル輪行
UFOラインを目指すうえで重要な分岐点となるのが、愛媛県と高知県の県境を貫く「新寒風山トンネル」です。
全長約5km。自転車で走れる日本最長のトンネルですが、長いトンネル内の自転車通行を考えると、トンネル手前の分岐から旧道を走って峠を越えるという選択肢もあり。
どちらを選択するかは実際に自分の目で見て判断しよう…と思っていたんですが、トンネル手前でなぜか車が渋滞中。ここまでほとんど車を見かけなかったのに?
ちょうど交通整理の方がいらっしゃったので話を聞くと、現在トンネル内工事のため、片側通行規制とのこと。5kmもあればそりゃあ待ち時間が長いし渋滞もするわけだ。
「自転車でトンネル抜けられますか?」と聞いたら、なんと「軽トラであちらまで輸送するので、ここでしばらくお待ちください。」だって。なんとここでまさかの「軽トラ輪行」というサプライズ。めったにできないいい経験をさせてもらいました。(笑)
軽トラ輪行されながらトンネル内の標識で高知県に入ったことを確認。山脈の稜線がちょうど県境になっているわけですね。このまま先に進めば「仁淀ブルー」も拝めるわけですが、今回の目的地は山頂方面です。
誘導員の方にUFOラインを目指していることを伝えると「ここから、なかなかの坂だけど…頑張ってね」と心配&応援されました。ちょっと不安になるじゃん。
県境を越え、高知県へ!
トンネルを抜けて、標高800m付近から自転車で再スタート。ここから林道を走って山頂を目指していくことになります。地図上ではほとんど九十九折りになっているので、それなりの覚悟が必要です。なにしろ初めてなのでペース配分がわからない。ここは慎重に走らねば。
トンネル出口からUFOラインの入り口までの距離は約7km、区間の平均斜度は6%くらい。油断して踏んじゃうとすぐに脚にくるので、軽めのギアを軽めに回していこう。
標高が上がってきているのが体感でわかります。コンクリート壁が岩肌に変わり、気温も下がってきました。林道なのでずっと日陰にいられることはありがたい。街中の気温は30℃を超えるといっていましたが、山中の環境は涼しくて快適です。
途中、綺麗な岩清水が湧き出る場所や、美しい稜線を見渡せる場所もあり、撮影がてらの休憩をはさみつつ九十九折を上っていきます。
いざ、UFOラインに突入!
林道ゾーンを抜けて、視界が開けた!というところが、UFOラインの入り口。わかりやすい道路標示がありがたい。峠の三叉路の一方は「旧寒風山隧道」、新寒風山トンネルの手前(愛媛側)から旧道沿いに上るとここに出るわけですね。
ここにはカフェもあっていい休憩ポイントになる…はずなんですが、平日だからか「CAFE BASE」さんのシャッターは閉まったまま。うん、これは想定内…だ。
親切に「ここが最後のトイレです」表示もあるので、迷わずにここでトイレを済ませます。東屋もあるので補給食をとりつつ休憩タイム。それにしても平日だからか、人がいない。きっと休日にはハイカーやバイカーでにぎわっている場所なんでしょうね。
ところで、先ほどの林道からUFOライン入り口までは、ブルーラインで「UFOライン入り口まで、あと○km」という表示があったのですが、UFOラインに入ると「山荘しらさまで、あと○km」に変わります。特に説明がないのですが「山荘しらさ」って何だろう…?と思いながらペダルを回していくのですが、後になってこの情報の重要性を実感することになるのです…。
それでは、いよいよUFOライン、正式名称「町道瓶ヶ森線(ちょうどうかめがもりせん)」に突入です。目当ての場所までは、あと17km…ってまあまあの距離があるんだ。(笑)
ちなみにUFOラインの名の由来ですが、ついこの間までUFOが見られる場所とか思っていたんですが、その昔「雄峰ライン(ゆうほうらいん)」と呼ばれていたものが、いつしか「UFOライン」呼ばれるようになったということです。今では路面にも看板にも「UFOライン」と書いてあるので、こちらが正式呼称になっているんですね。
UFOラインは下りからのスタート。これは稜線にそった快適な山岳ライドが楽しめそう!と思ったら、ほどなくしてまさかの10%超えの登り区間の連続!?さっきの九十九折区間で山場は越えたと思ったのに…。憧れの絶景ポイントまではかなり過酷な区間となりそう…というか、なりました。
容赦ない斜度が襲い掛かってきますが、時折フォトスポットが顔を出すので都合よく脚休めもできたりして…。
幸いにして新寒風山トンネル手前の「水汲み場」で水分に余裕を持っておけたことは良かったのですが…、悪いことにエネルギーが圧倒的に不足。朝バナナとカロリーメイトとラムネではこの区間のカロリーはマイナス収支です。ヤバイヨヤバイヨ…!
度重なる急勾配に心が折れそうになった時、視界の先に現れた緑の頂。見覚えのあるシルエットは目的地が近いことを予感させます。アドレナリンがあふれることを実感して、ここでもうひと踏ん張り。
UFOライン、憧れの地「伊予富士」
どーーーーん!!でたーーーーー!!!ぜっけいだーーーー!!!!
最後のコーナーを抜けて、目の前が開けた途端の景色がコレ。瞬間、疲れが吹き飛んで「ぬぁあーーー!」という謎の感嘆詞とともにガッツポーズ!! そして、自然とバイクを止める私。
標高約1,600m地点。あの頂を最高峰とする稜線は、背の低い笹による緑の絨毯で覆われています。周りは深い渓谷と山塊に囲まれ、ここだけが本当に別世界のよう。
来た時期がよかったのか、ほとんど人もなく、この空間をほぼ独り占めできているという奇跡的な条件が、充実感や満足感をさらに高めてくれます。来てよかったー!!
このポイントからは約10分程度のハイクで「伊予富士」の山頂を目指すことができるようでしたが、思ったより笹の丈が長くて素足の夏ジャージではケガをしそうだったのと、季節的にハチがよく飛んでいたので今回は登頂をあきらめます。その分、この美しい稜線をゆっくり流しながら景色を楽しむことにしましょう。
全長約25kmあるUFOラインの一番の見どころ「伊予富士」エリアは、入り口から約17km地点。尾根に沿った約1kmの区間には、本当に美しく心奪われる光景が広がります。ここは苦しんでも無理をしてでも、自転車で訪れてこそ価値があるところですよ!
絶景をあとに、高山ライド。
UFOラインはまだ途中。見事な景色との別れを惜しみつつ先へ進むことに。この絶景が峠になっているので、ここからは尾根伝いにゆったりとした起伏の道を進むのんびりライド。
走りながら周りの山々を見下ろすことができる雄大な空間。とはいえガードレールの先は転落したら命が危ないゾーンなので、タカイトコロコワイ症の私の心拍は所々で急上昇したりします。
そうそう、いつもは気にしないのになぜか惹かれた野草たち。きっと高山植物なんだろうと思います。標高1,500mを超える高地で、岩場に咲く小さく可憐な花たちが印象的でした。
自転車旅では、五感を刺激されるので知らない間に感受性が豊かになっているのかもしれませんね。
ここから先は下り基調、だけど「寒い…!」。ジレをもって来ていてよかった。
気温は測っていませんが、汗をかいた夏ジャージでの下りは凍えるほどの体感です。平地は30℃予報ですが、石鎚山では20℃切ってたと思います。行く方は防寒対策をおススメします。
それでも高所にいる分、ところどころで見事な山稜の景色が見られるのですけどね。
さて、パワーが出ない。
原因はわかっています。ハンガーノックまではいかないものの、圧倒的にカロリーが不足しています。手元の補給食はUFOラインの登りで食べつくしてしまった。標高1,500mの林道にコンビニがあるとは到底思えない…。(あるわけない)
…そうか!!ブルーラインに表記されている「山荘しらさ」が唯一のライフラインなのか!
ひとまずあと6kmくらいのようので、激しい登りがなければ何とかたどり着けるでしょう。
高山のオアシス「山荘しらさ」にて
思いのほか下り基調。空を挟んだ向こうには石鎚山の頂が見えるポイントもあったりして、写真のために脚を止めたりしながら、余裕のある行程で「山荘しらさ」に到着することができました。
しかし、こんな平日の昼間に食事などできるのだろうか…そもそも営業しているのか…という一抹の不安が募ります。
そんな山荘しらさは金曜日にも絶賛営業中でした。これはきっと日ごろの行いが良いからでしょう。山の神に感謝!
山荘という名前ですが、なんともお洒落な内装。食堂ではなくレストランですね。
とにかく体が凍えていたので、暖かいもの&できるだけ高カロリーのものを食べたいところ。スープカレーにも惹かれつつ、選ばれたのは「きじコロとりからランチ(\1,5000)」でした。
キジ肉入りのコロッケとガーリック多めの唐揚げが美味。凍えた体に嬉しい野菜スープ。ここはエネルギー変換を意識して、ゆっくり噛んでゆっくり飲み込む。小学校給食で習うような丁寧な食べ方で約30分をかけて完食。
注文の際にカウンターのお姉さんとお話をしたのですが、どうやらこの日は大当たりだったみたい。「昨日まで1週間ほど、ずっとガスがかかってたんですよ。明日からも雨なので、お客さん大当たり引きましたね!」だって。なんと嬉しい情報!きっと日ごろの…(以下略)
山荘しらさでゆっくりレストをしていたら、この日初めてローディーさんをお見掛けしました。
イエローブラックのGIANT、あいさつ程度でしたがバイクの装備がほぼ同じ。遠方からの旅ライダーさんだったのかもしれません。入れ違いになっちゃったのが惜しいな。
出発前に自販機で空っぽになったボトルをいっぱいに。ちなみに自販機ラインナップは、ポカリ・イオンウオーター・アミノサプリ・カロリーメイト・ソイジョイと、山の遭難者用メニュー。これは嬉しすぎます。(笑)
UFOラインのゴール「土小屋」へ
山荘しらさの先からは、基本的に下り基調。ブルーラインの示す先は「土小屋」に変わりました。
急こう配の下りセクションとカーブが続くので、ブレーキングには気をつかいますが登りの苦しさに比べればずっとまし。
時折見える絶景ポイントで写真を撮りつつ下っていくと、延べ約25kmのUFOラインのゴール。
いきなり現れた垢ぬけたエリア。なんたって名前もお洒落に「土小屋terrace」、モンベルやレストランが入った観光施設になっています。他にも宿泊用の山荘があったり、駐車場やロータリーも整備されていたり、つまり登山者のためのベースになっているんですね。
個人的には「石鎚神社 土小屋遙拝殿」にはぜひとも参拝したかったので、バイクをおいてお参りです。
面白いところでは「石鎚山ヒルクライム」のモニュメントもありました。
ずいぶん整備の行き届いたエリアですが、個人的にはこの土小屋エリアが、ちょうど「下界と天界の境目」であるように感じました。
「石鎚スカイライン」ダウンヒル
UFOライン全長約25kmの旅は一旦ここで終了。標高1492m(いよくに=伊予国メートル)から一気に下っていくことにしましょう。
高規格の2車線道路をノンストレスでダウンヒル。位置エネルギーってすごい!一気に標高が下がっていくので、体感で気圧と気温が上がってくることがわかります。
麓の大鳥居は、きっと表参道の入り口なんでしょう。
標高が下がると、川の流れが大きくなり、民家も出現します。それにしてもこの立体感ある集落の構成はスゴイ。
次の休憩ポイントは「おもご ふるさとの駅」。ここで2回目の補給をしようと考えていたのに…完全クローズ。自販機だけが旅人を待ってくれていました。
旅先でのトラブルは多々ありますが、補給ができない系トラブルは命に関わるので本当に避けたいところ。とにかくカロリー補給ができるように糖分多めのドリンクをストックしておきます。
この時点で15時を回っていたので、日没の時間等を考えると、最短ルートで西条市に向かうことがベストです。以前に地方の山道で日が暮れた時のヤバさを身をもって体験しているので。
フェリー内でのプランでは、松山市に出て、道後温泉で汗を流し、JR輪行で西条に着く。というプランを描いていましたが、今となっては現実味がないので、このまま2時間の見積もりでもう一つ峠を越える選択をしました。
久万高原(くまこうげん)町、面川ダムを経由し「黒森峠」を越える、ヒルクライムルートです。がんばれ!自分!
今日のライドの行程がまるまる記されている看板。鉄板ルートだったのか…なぜか悔しい。(笑)
平均斜度は7%前後。なかなかキツイ。ほぼ無心でペダルをまわしてようやく黒森峠を越えました。標高は985m…って、ほぼ+1,000mUPやないかい!
峠を越えたら、東温市(とうおんし)。高台からようやく街と人の気配を見つけることができて安堵。街にさえ出れば大抵のことはなんとかなるものです。
九十九折を下り、山のすそ野へ沈む夕日を眺め、棚田エリアを駆け抜けて、愛媛の大動脈、国道11号線へ合流です。
交通量は一気に増えて、トラックや乗用車とともに、西条方面へ進みます。ゴールまではあと少し。
しかし昼食からもう4時間を経過。水分以外の補給ができないままずっとペダルを回しているので、一刻も早く食事にありつきたい。
なんて考えていましたが、結局のところ西条市街までノンストップ。そして目の前に現れたのが「焼肉 五苑」。意識は飛びかけていましたが体はお肉の匂いに引き寄せられ…気づけば席についていた私。
現在19時、港まではあと2km、出航は22時、なので十分以上の余裕!ここでひとり焼肉のお疲れさま会としましょう!!
うん。うまいっ!!…けれど…食べられない!!??
なんだかんだで自分史上、一・二を争う過酷なライドとなったので、それなりに内蔵にもダメージが積み重なっていたようです。本当に美味しかったけれど、本当にちょっとだけの食事になっちゃいました。
そして20時30分。出航まで十分な余裕をもって、無事「東予港」に到着です。
直前にコンビニで、船内ひとり打ち上げのためのお酒とおつまみ、そして翌日の朝食を忘れずに買っておきました。
とにかく疲れていたので、乗船後は部屋にバイクと荷物を入れ込んだら、まっすぐ大浴場に向かいます。汗を流して、湯船で思いっきり体をのばして…あーーー、つかれたあーー!!
お風呂で体もリラックスできたのか、さっき焼肉を食べたばかりなのに急激におなかが減ってきました。船内自販機でおつまみを買い足して、フリースペースで晩酌を楽しみながら、走行ログと写真の整理をしていたら…ソファーで小一時間眠ってしまっていたようです。
消灯に気づいて部屋に帰った私は、疲れのあまりそのまま溶けるように眠ってしまいましたとさ。
UFOライン、弾丸自転車旅のまとめ
前日の夜行便のフェリーに飛び乗り、現地での1dayライド。写真で見た「UFOラインの絶景」を見に行った今回のライドは、走行距離148km、走行時間8時間30分、獲得標高2,500mという我ながら壮絶な行程。
自転車旅で1日150kmには慣れていますが、1日2,500mアップというのは未知の領域。そりゃあ疲れますよね。けれど、その分走りごたえもあり、景色の見どころも多く、非常に濃くて充実したライドになったのでした。
船中2泊、現地日帰りという弾丸ツアーでしたが、これも立派な自転車旅。夏に遠出できなかったうっぷんを一気に晴らせて満足です。
以下、旅のポイントです。これからUFOラインを目指す方の参考になれば。
<旅のポイント>
□補給は西条市内のコンビニがラストと思って補給食を多めにキープしておくこと。二回目の補給は良くて「山荘しらさ」になる。
□季節の防寒具は必須。とにかくウインドブレーカーを。街中より10℃以上気温は下がる。
□ただ登る。ひたすら登る。区間斜度が7%~10%のところが多いので、クライマー体質でない人は、ある程度登れるようになってから挑むのが吉。基本的にはエスケープ不能。
□絶景ポイントまでの50kmは修行と思え。
□ちなみにUFOラインは11月下旬~4月中旬まで冬期通行止め。平時でもUFOライン、石鎚スカイラインともに18時にはゲートが閉まる点も要注意。
■美しい清流、雄大な山々、四国の美しい自然を五感をもって感じられる。
■UFOラインの絶景は、苦労して登っていく価値あり。その感動はプライスレス。
■山荘しらさでの宿泊を組み込むと、ライド&ハイクでのプランが可能。山頂からの絶景はスゴイらしい。
<今回の概算経費>
・フェリー運賃 約19,000円(往復)
・補給食等 約2,000円(全行程)
・食費 約6,000円(船内朝食、昼・夕外食)
【合計】約27,000円
あーーーー、たのしかったーーーー!!自転車旅ってやっぱり良いですよね。
という自己満足でした。
めでたし、めでたし。
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