初の親子旅もいよいよ最終日。
四国から広島へとステージを移して、この日は80kmを走破します。昨日より20kmも距離を延ばすわけですが、果たして無事に小6はゴールの地を踏むことができるのか!?
ということで、まずはダイジェスト映像からご覧ください。
スタート地は「呉」
朝7時、携帯のアラームが軽やかに1日の始まりを告げてくれます。
いつもの一人旅では、できるだけ距離を稼ぐためにもっと早起きをするものですが、今回の親子旅はゆっくりペース。
買っておいた朝食を食べて、のんびりと身支度を整えたら8時にチェックアウト。
バイクはホテルの方にお願いして、1階のロビーの隅に置かせていただきました。
ここを融通してもらったのは本当に助かります。「呉ステーションホテル」さん、ありがとうございました!
呉の街は、河口にもなっている港を中心に発展しています。
ここに駅やホテル、ショッピング街や博物館までなんでもそろっているので、1日で巡る観光地としてはコンパクトでうってつけ。
少し遠くに目をやると、大きな船舶がドック入りしていたりもして、まさに呉独特の風景が広がります。
位置的には、海岸線に沿って広島と尾道をつなぐ動線にあるので、しまなみ海道やとびしま海道との相性も良く、自転車旅の候補地としてもすぐれたロケーションですよ。
そんな呉の街で、唯一の取りこぼしが「海軍カレー」
海上自衛隊の基地の周辺では、なぜか「海軍カレー」のお店が栄えるんですよね。長い間船舶で公開される隊員さんのための有名な賄飯、といったところでしょうか。
個人的にカレーが大好きなんですが、以前も舞鶴旅で食べ損ねたので、いまだ口にしたことがないという不幸…。次の機会こそは!!
山地から駆け下りてすぐ港、という独特の地形は街をとても立体的に見せてくれます。
旅をしていると、一度見たら忘れられない街の風景に時々出会いますが、呉のこの感じもそのひとつです。
今回は宿泊と通過の地点ですが、もう少しゆっくり滞在したかったな。
海岸沿いをのんびりツーリング
呉の街を抜けて、海岸線沿いに東へ進路をとります。
今日は国道185号線をただひた走るというルーティング。呉から三原までの一本道は景色も良くて走りやすいですね。
目指しているのは「竹原の街並み」そして「ウサギの島 大久野島」。個人的には「とびしま海道」も射程に入れたいけれど、走力と距離の関係で親子旅である今回は見送ることに。
穏やかな海岸線ですが、岬のアップダウンがあるので時折休憩をはさみつつ、のんびりペースで行きましょう。
瀬戸内の海辺の景色は変化に富んでいて、走っていて飽きることがないですね。
四国と本州に挟まれた大きな海道には、大小さまざまな島やそれらをつなぐ橋、港町やカキ小屋など、どこもかしこも特徴的な光景が広がっていてでシャッターを切る手が止まりません。
穏やかで長閑な海辺は、どこでも休憩可能。安心感あふれる景色には体だけでなく心も癒されます。
ちなみに小6の息子は終始ずっと遅れ気味。昨日の疲れが残ってるんだろうな…と思っていたら、なんと自分で脚を止めてところどころシャッターを切っていた様子。これが親子ということか(笑)
国道に沿ってJRの路線がずっと並走しているのも安心ポイント。なにかあった時に、輪行モードに切り替えられるというのは心強いです。
JR呉線の別称は「瀬戸内さざなみ線」。そう、瀬戸内海って穏やかでずっとさざ波なんですよね。
河口にある、きっと魚を捕るためのしかけ。潮位の上下を利用しているんだと思う。
山積みになったホタテの貝殻。これは間違いなく牡蠣の養殖につかうやつ。
進撃してくる巨人に対抗するために作られた巨大ネコ型ロボット…みたいな砂防ダム。
とかなんとか、子どもと一緒に「あれはなんだ、これはなんだ」という会話をしながら一本道をゆっくり進んでいきます。
それにしても飽きない道だなあ。
古き良き「竹原」の街並み
呉から国道185号を走り続けること約3時間。距離にしてだいたい50km。
本日の一つ目の目的地が近づいてきました。さりげなくゴールの三原までの距離も見え隠れしていますね。
8時に呉を出たのでちょうどお昼前。
「昼食は何にするー?」
「海鮮か、マクド!」
おおぅ…ふり幅がすごい(笑)。
しかし子どもらしい。おそらく私が小6でも同じだろうな、ということで竹原にちょうどロードサイド店を見つけたので、ここでおなか一杯にすることに。
竹原には私が来たかったので、父親チョイスのチェックポイント。
古くから港町として栄え「安芸の小京都」と呼ばれる古式ゆかしい町並みをぜひこの目で見ておきたかったのです。
瀬戸内の真ん中にあって高速のICからも離れているからか、派手さのない落ち着いた観光地になっています。そこがいいんだよなぁ。
古民家や商店が立ち並ぶ一角は「伝統的建造物群」の保存地区にもなっていて、ゆっくりポタリングに最適です。
旅をしていると「小京都」と呼ばれる場所がしばしば登場しますが、この落ち着いた感じは竹原特有のものなんでしょうね。
風情のある酒蔵の前でパチリ。
「竹鶴」。どこかで聞いたことがあるなあ…なんて思ってたら、あのNHK連続テレビ小説「マッサン」の実家じゃないですか!!
下調べしてなかったので、びっくり&嬉しい発見でした。
で、そんな竹鶴酒造の前でシャッターをきっていると、独り言をつぶやきながらのんびり歩くおじさんが。
よく見ると周りにカメラやマイクを持った取り巻きがいる…あれ??
あーー!「中山秀征」さんだー!!ひでちゃーーんん!!
なんと、ぶらり旅的なロケに来ていた様子です。私ら親子はすぐそばにいたので、カメラに見切れたのではないかしら…なんて余計な心配を(笑)。
でもロケの邪魔をしちゃいけません。
「秀ちゃんもったいないけど、先に行こか」
「秀ちゃんってだれ?」
…せやな。(ジェネレーションギャップ)
そんなこんなで小一時間、竹原の街並みを堪能した私たちでした。
ちなみにここ竹原は、アニメ「たまゆら」の聖地なんですって。残念ながらアニメを知らないのでそのあたりは華麗にスルーしちゃいました。
最終目的地はウサギの島「大久野島」
竹原をあとに、また海沿いの道に戻ってきました。心なしか島の数が増えてきたような気もします。
その中で異彩をはなつ1本の鉄塔。あれが本日の目的地「大久野島(おおくのしま)」なんです。
島なので当然フェリーを利用することになります。
乗船するのは「忠海港(ただのうみこう)」。JR呉線の駅がほぼ併設なので、鉄道でのアクセスも可能。
どーーーん!!
ローカルな港に似合わない、派手派手&超シルバニアな感じのチケット売り場が姿を現しました。
私自身は2度目なんですが、数年前から一層パワーアップしているような気がします。
ここは子どものたっての願いを受けて、行程に組み込んだ場所。
動物が好きなのと、兄が修学旅行で行ったのにコロナ禍のせいで見送られた結果、行けなかった場所。
よし!思い出の補完なら、私がひとはだ脱ごうじゃないか!というストーリーです。
出航までの待ち時間に港をぶらり。
漁船が並ぶ瀬戸内の小さな港町。こういう光景が好き。
その分、ウサギのチケット売り場がすごく異彩を放ってるのがよくわかります。しかしこれも町おこしのため、と理解しましょう。
フェリーが着岸。往復便で大体1時間に1~2本は出ているので、待ち時間はそんなに持て余しません。
この忠海港からしまなみ海道の大三島を結ぶ航路で、途中に大久野島を挟むという形になっています。
自転車は輪行もできるけれど、チケット売り場でもらえる「せとうちサイクルクルーズパス」で約30%割引になることから、そのまま載せこみです。
乗船時間が15分程度なので、輪行にかかる時間の方がもったいないですし。
これだけの人たちがウサギに会いに上陸します。なので、フェリーは大混雑で立ち乗り必須。
でも短い乗船時間と瀬戸内の景色を眺められることで、一切気になりませんけどね。
いよいよ大久野島に上陸です。
サイクリストにも有名な島になっていますが、珍しくロード勢は私たち親子のみでした。
1周約4kmのこの島は、徒歩だとそこそこ時間がかかりますが、自転車ならものの20分くらいで一周できちゃいます。自転車旅のメリットとしては、効率的に回ってフェリーの時間を計算することができるので、旅の行程に組み込みやすいところ。
ちなみに前回の旅では、大久野島から大三島に渡って、しまなみ海道へルートチェンジという行程が組めました。今回はまた忠海に戻るルートです。
言ってるそばから、ウサギ発見!!
草食の小動物は外敵から身を隠すために、物陰に隠れているのがセオリー。
デッキの下をのぞき込むと無数のウサギたちがちょろちょろ動いています。
島の生態系からか、自転車を一切怖がらないみたい。むしろ興味深く近づいてくる子もいたりして、ウサギ天国のウサギ文化がうかがえます。
うん。人慣れしとる。
食糧を持ち込んで、定期的に配給してくれる観光客が彼らのライフラインでもあるんだろうな。
小6の息子は直接手から餌をあげています。適応力すごいなあ。
この小さな島にある唯一の宿泊施設「休暇村 大久野島」
見たまんま集団宿泊が可能な設備は関西の修学旅行の定番となっています。兄たちは小6の修学旅行でここに泊まったそうな。
自転車を怖がらない人たち。いや、ウサギたち。
あまりにも可愛らしいけれど、これでも一応「野生」です。白うさぎはアルビノになるのかな。
こんな感じで、自転車だと島の一周がたやすい。
効率的に動ける分、ウサギに時間をとることができます。
ウサギであまりにも有名になりすぎた感がありますが、この大久野島にはもう一つの顔があります。
太平洋戦争時に地図に載せられなかった島。毒ガスの開発や砲台の建設がされていた戦時の重要拠点でもあるのです。
そのため、島の奥にはこのような「戦争遺構」が多く残っています。
平和を象徴するようなウサギの姿と朽ちていく戦争遺構。ウサギの存在はこの島へのアンチテーゼとなっているような気さえしますね。
約1時間かけて、ウサギとの触れ合いミッションと島の1周ミッションを達成しました。子どもも大満足な様子。
ここからはフェリーに乗って、再度忠海港に戻ることになります。
フェリーのデッキから遠くに目をやると、おおきな吊り橋がのぞいています。
あれは「しまなみ海道」。もう幾度も走っていますが、多島をつなぐ橋は世界屈指のサイクルルートのランドマークですね。
そんなにウサギを推すんだね。というくらい、改めて見るとすごい徹底ぶり。
このミニ・クーパーとかやりすぎ感もあるけれど…ウサギ好きにはたまらんのでしょう。(笑)
旅のゴール地は「三原駅」
さあ、旅もいよいよラストスパートです。
国道185号の始発点「呉」を出て終着点である「三原」まで一気に走り抜けてきましたが、残りはあと10km。
線路と海に挟まれた、美しい景色が流れるルートもそろそろおしまい。
海辺とのお別れの光景は、あちらに見える「しまなみ海道」。次はここへ来いよ!と誘ってそうな画ですね。
ゴォオーーーーール!!!
ここが旅の終着点「三原駅」です。
三原に関する知識は全くなく、帰りの駅程度にしか思っていなかったのですが、ゴール地点の様子からここが広島屈指の城下町であることや「やっさ踊り」で有名な地であることがわかりました。
だから新幹線の駅舎が建つわけですね。
広々とした近代的な駅前で、ゆるゆると輪行準備を始めましょう。
都合2台分の輪行準備を整え、余裕をもって新幹線のホームへ。
毎度のことですが、今回の新幹線も定番の「バリ得!こだま」を利用しています。
日付&便指定の格安チケットはリーズナブルだけど、間に合わないときは振替不能でチケットがただの紙切れと化すというリスクを含みますが、余裕をもって行程を組むことで対応。
今回は子連れで時間も心配だったので、だいぶん安全マージンを稼がしてもらいました。
ここから新大阪まで約2時間30分の電車旅。いつもどおり食事とお酒とおつまみを買って、シートで親子とも至福の時間をすごしましたとさ。
親子旅のまとめ
私史上初の「ツールド×親子旅」。船中泊を含んだ2泊3日の旅行程は、全4回の記事の形でお送りしてきました。
詳細は各記事に任せるとして、愛媛と広島それぞれのルートはこんな感じです。
それでは自分への備忘録、そして誰かが親子旅をするときの参考に、今回の旅で気づいた点をいくつか挙げておきます。
□子どもの走力について
うちの息子は小6で今まで特にスポーツをしていたわけでもなく、初めての自転車旅です。兄のおさがりで日常的にロードに乗っていることを除けば比較的「ふつう」の小学生男子。
それでも1日目に60km、2日目に至っては80kmを走り切っています。補給や休憩をまめにとることで回復力は意外と大人よりも早いようで、疲れはしていましたが旅を楽しむ余裕はありました。「1日60km」くらいが一つの目安かもしれませんね。
□旅の質の変化
これは私が日ごろ「ひとり旅」しかしないからかも知れませんが、子どもにとって「走るだけ」は退屈すぎます。何気ない風景に気づくのはもっと大人になってから。子どもと一緒のライドでは観光や体験のウェイトを大きくとることが大切です。「走ることよりも観ること・体験すること」に重きを置きましょう。
□旅の機材を子どもの分まで
今回は「カメラ」がひとつのキーアイテムでした。おさがりのスマホでもいいのですが、旅にひとつ「思い出を記録する」ためのツールがあると、子どもはその場その場を意識して記録するようになります。この旅では、私が先を進んでいても自ら脚をとめて写真を撮影していました。感受性や感覚をはぐくむのに、カメラのような記録ツールは大切かも知れません。
□安全の確保
これが最も重要です。記事には書いていませんが、この旅で私はとても疲れました。自分以外の誰か、特に子どもを気にかけて、道路上の安全に気を配ることは生半可なことではありません。
絶えず車の行き来に気を付けて、場所によっては先頭を交代し、先導中は絶えず後ろを振り返る…
本当に何事もなくて良かったですが、子ども自身の疲れからライド姿勢が荒れることがあったりと冷や冷やすることもありました。親子旅をする場合には、事前にルーティングや休憩回数などのプラン検討からはじめて「どのように子どもの安全を守るのか」を十分意識したうえで実行するようにしてください。
□経費面では厳しい
これも重要。単純に経費がかかります。特に交通費・宿泊費が倍になるのはお財布へのダメージが半端ない。今回の相方は小6だったので大概のことは「こども料金半額」で乗り切ってこれましたが、この先は大人料金がかかることを考えると、単純に経費が倍になってしまう。どうしようもないことですが。
結果として、2日間で子どもは140kmを走破することになりましたが、この結果が彼に自信や経験を植え付けてくれました。時期的にはちょうど卒業旅行に該当し、中学生になる前のひとつの通過儀礼のような位置づけでもあったように思います。
父親としては、旅そのものよりも旅で気づきや学びを得て成長していく子どもの姿を見ることができたのが一番の収穫でもあり、喜びでした。
そういう意味ではふだんの「ツールド×ひとり旅」とは全くスタイルが異なるのがこの「ツールド×親子旅」。
もし、この記事をご覧の方にちょうど同じくらいのお子さんがいて「ともに旅をしよう」と考えたときにはぜひこれらの記事を参考にして、実践いただければと思います。
兎にも角にも、非常に面白く、充実した旅となりました。
めでたし、めでたし。
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