【自転車旅】山口県ライド 1日目/山口の絶景「角島大橋」は蒼かった!<門司港・唐戸市場・角島大橋・角島灯台・元乃隅稲成神社・萩>

ツールド×旅Life

プロローグ~新門司港から~

ゴンゴンゴン…船のエンジン音が心地よく響くなか、朝の船内放送で目が覚める。毎度のことながら船内で迎える朝の感じがとても好き。

広めのシングルベッドで大きく伸びをしたらバスタオルをもって大浴場へ。朝風呂も船旅の大事な儀式。熱めのお湯で交感神経が刺激されて、頭も体もしっかり目覚めることができます。そう、これが船旅の醍醐味なのです。

いつもと違うのは、朝の時間がとても早いことくらい。福岡県【新門司港】に到着するのは朝の5時30分。1日目から長旅になるのはわかっているので「ゆっくり下船プラン」に申し込んでおいて正解。この場合7時までに下船すれば大丈夫なのです。

船内での朝食は300円。ここは値段なりのトースト朝食でしたが、これは早朝便ゆえのシステムなんでしょうね。少し驚いたのは、朝食会場にいた人のほとんどが中国系の方々だったこと。この頃はまさにインバウンドで潤ってた時期でもありました。

それでは装備を整えて、午前7時【新門司港】を出発です。まだ低い位置にある朝陽を受けながら走る湾岸の道が心地いい。10月中旬の涼し気な潮風を受けながら、まずは【門司港】を目指します。

福岡に隣接するのは瀬戸内海。穏やかな海の表情に癒されます。この時間帯はフェリーを降りてきた車以外はあまり通行がなく、湾岸の道路はかなりの快適&快走ゾーン。

今回の山口旅の1日目の行程は、ゴールを【萩】に定め、関門海峡から日本海沿いに北上するルートです。途中、有名な【角島大橋】や【元乃隅稲成神社】などを経由することで<総距離161km、獲得標高1,600m、実走行時間8時間>というまずまずのロングライドとなりました。

明治・大正レトロの港町【門司港】

新門司港から10kmくらい。走り出して20分で山口との県境【門司港(もじこう)】に到着しました。この一帯は「門司港レトロ」と呼ばれていて、明治・大正からの建造物群が多く残されています。

今回の旅のメインは山口県なのでここにあまり長居はできませんが、それでも素敵な建物を見ると脚を止めざるを得ませんね。まあチョイ寄りということで。

貿易港の名残である赤レンガ造りの建物が多く残っているので街中が異国感であふれています。人がいない早朝なのもロケーション的にいいですね。

現役車両ではないですが、路面電車の実物が展示されていたりして、街を上げてレトロ感の演出をされていることが伝わってきます。【門司港レトロ】は帰りにも立ち寄ることが確定しているので、ここは予習程度に軽くポタリングをしておく程度で抑えておきましょう。

九州と本州を繋ぐ道【関門海峡】

門司港は本州からの玄関口でもあります。この大きな橋が【関門橋】そして名高いトンネルが【関門トンネル】。素人目にもわかる、海流が速そうな海峡を上下の通路で渡れるようにしてあるんですね。この「関門海峡を渡る」というのは、私の積年の夢でもあったのです。

そして自転車で関門海峡を渡るには、この大きなエレベーターに乗る必要があるのです。この地下秘密基地に侵入するかのようなシチュエーションにワクワク感がとまりません。

そんな地下に現れたのがこちら【関門トンネル人道】。自転車と歩行者の専用道として関門橋・関門トンネルと別に作られている約800Mのトンネルです。よくよく考えるとこの上は海になっているわけで、漏水などあれば一発で沈むことを考えると別の意味でドキドキしてしまいますね…。

トンネルの中央付近にはこの表示。目指すはあちら側の【山口県】。景色もなんにもないので唯一この表示だけがその位置を示してくれる手がかり。あと約400M、奥に見えている明かりを目指してもうひと頑張りです。あ、ちなみに自転車は押し歩きオンリーですよ。

海鮮の宝石箱【唐戸市場】

関門トンネル人道の山口側に到着したら改めてエレベーターに乗って本州に上陸です。自転車通行料はなんと驚異の20円(!)。なにかの足しになるのかしら…と余計な心配までしてしまいます。ちなみに行きも帰りも山口県側で支払うシステムのようですね。

地上にあがって目に飛び込んできたのは、源氏と平家の戦いモニュメント。つまりここが【壇ノ浦】だ。九州側では門司港がメインであまり歴史的なランドマークを見つけられなかったのですが、山口側では、源氏と平家の【壇ノ浦】であり、武蔵と小次郎の【巌流島】であり、幕末の【下関戦争】の舞台でもあるのです。下関ってスゴイ…。というか戦いすぎ。

職場の後輩さんから「下関に行くならぜひ行ってください。」と事前にアドバイスを受けていたので、まず向かった先は【唐戸市場】。ここは下関の海産物を扱う大きな市場で、大小さまざまなお店が所狭しと並んでいます。寿司・海鮮丼から加工品までありとあらゆる海鮮がリーズナブルな価格で提供されているという夢のような空間。自転車旅人にとってもありがたい食事の場所です。

時間は朝8:00。実は日曜日のオープン時間は少し遅め。つまり、船で少しゆっくりしていて正解なのでした。それにしてもオープンすぐからこの込み具合はなかなかのもの。品揃えも多く海鮮の宝石箱のよう。これはたまりませんねー。

船から1時間くらいしかたっていませんが、ここで二度目の朝食にします。いろんなお店があって迷いましたが、【海鮮丼(500円)】と【フグのから揚げ(300円)】を海峡を眺めながらいただきました。食事も景色も最高な場所ですね。唐戸市場…おそるべし。

海に連なる千本鳥居【福徳稲荷神社】

二度目の朝食を済ませたら、ここから本格的なライドのスタート。下関から海沿いに北上するつもりなので「国道191号線」をひた走ります。…しかし、ここに地方国道の罠が!?。

県内交通の動脈としてかなりの財源をかけたであろう高規格道路は、いたるところに有料道路と見間違うような合流・離合帯が整備され、その分不要な車両の出入りを阻みます。
そのうえでなぜか小型車両や自転車禁止の標識がなく、乗ったが最後、法定速度をはるかに超えているだろう自動車にあおられまくるという危険な行程に…

ともかく都市部を出るまでは冷や汗もののライドとなったのです。地方国道の罠、自転車旅人は警戒するにこしたことはありませんよ。

とはいえ、都市部を越えると国道の様子もこのように落ちつきます。というか、状況は180度変わって最高の景観。国道に並走する単線の線路と多島湾の美しい風景。こういうのが自転車旅の醍醐味なんですよね。

海岸沿いを北上していると、大きな神社の看板と明らかにクライマーを挑発するような入口を発見。見た感じ20%以上ある坂だ…旅では脚を消耗したくないけれど、この斜度は気になる…

とか言いながら、早々に押し歩いて到着したのが【福徳稲荷神社】。事前調べには引っかからなかったのですが、巨大な鳥居と立派な本殿の存在感がすごい。結構有名なところなのかも。

あの斜度を誇る坂を上ったわけだから、景色が悪いわけがない。鳥居の先に海を見下ろす圧倒的な光景。これは立ち寄って正解でした!

境内には高台へ続く「千本鳥居」が並び、旅人を奥へといざなってくれます。その先にはもちろん「海」。天気も良かったのでとてもいい眺めを堪能することができました。計画にない旅の立ち寄りにはしばしば心を奪われますが、ここもそういう貴重な旅ポイントですね。

山口県屈指の絶景スポット【角島大橋&角島灯台】

国道191号線をさらに北上。下関からしばらくは落ち着いた風景の中を走ることができます。暖かい日差しと潮風を感じながら、今回の旅はアタリだな!とすでに満足感でいっぱい。

とにかく、空の青と海の青がきれいな日。海沿いのどこを見ても「ああ、きれいだなあ」と幸せを感じてしまうのです。しかし、目指しているのはきっとこの上を行く風景なんでしょう。

その目的地とは…

どーーーん!!【角島大橋(つのしまおおはし)】だーー!

山口県の観光を検索するともれなくついてくる場所で、WEBやらCMやらで見たことがある風景。でもやっぱり自分の目で見て、空気を感じ、感動する。という行為を抜きにして「知っている」とは言えません。旅人なるもの、しっかりと「体験」せねば、です。

こういう時に自分の語彙力が試されるのですが…「美しい。」くらいしか思いつかないのが悔しい。文字どおり「角島」までをつなぐ一本の架橋が白浜とエメラルドグリーンの海を貫きます。あの先には楽園か天国があるのかな…くらいの印象を残すくらいの絶景。

小さな高台に自転車を置いて景色を眺めていると、バイクツーリングの方に「写真とりましょうか?」と声をかけられした。ご厚意に甘えかけて気づいたのですが、みんなここで写真を撮りたいんですね。いい場所でぼーっとしててスイマセンでした。

見るべき景色はいったんクリアしましたが、楽園への道は走っておかないといけません。この橋の景色は有名ですが、それだけで終わるようでは「旅人」ではないですからね。

この【角島大橋】走ってみて驚いたのですが、とても長い。なんと全長約1,8kmもあるようです。そして思っていたよりも海面に近いんです。つまりここを自転車で走るということは…まさに「海の上を走っている」感じ。ゆっくり走って10分程度ですが、それでもこの「海上滑走感」はなかなか味わえるものではありません。

【角島(つのしま)】に渡り切った先にある展望台から本州側を眺めるとこんな感じ。かなりの距離があることを実感します。

ここからは、一周約17km、人口約700人の【角島】をゆっくりめぐりましょう。旅の醍醐味のひとつ「島ポタ」ですね。

はい。来てよかったー!!灯台があるじゃないですか、それも「とても美しい」やつ。いろんな灯台を見てきましたが、私的に「貴婦人」感をかんじてしまったのがこの【角島灯台(つのしまとうだい)】。

先にも書いていますが、旅の予期せぬ出会いは本当に貴重。下調べした場所に行くよりも感動の度合いが強い。そして、この時初めて知ったのが【日本の登れる灯台16基】。そしてこの角島灯台がそのひとつであること。こんなラッキーってありますかね。(ありました)

ここは当然、登るしかありません。入塔するには「保存協力金(当時200円)」を払うのですが、個人的にはもっと取ってもらっていいですよ…とか思ってしまいます。しっかり保存して多くの人に見てもらえる状態であってほしいですからね。

そして灯台の上から眺める日本海。このパノラマ感はすごい。目線を隔てるものがなにもないわけだから…もはや絶句。

ところで私、タカイトコロコワイ症なのですが、この時はあまりの絶景に飲まれてしまって、恐怖を感じるどころではなかったのです。なるほど、美しさを感じる心は恐怖感に勝るのですね。

降りて、また灯台を撮る。ジェンダーを気にする方には申し訳ないですが、個人的にはとても女性的で美しいシルエットに感じます。この灯台に完全に惚れてしまいました。

実はこの灯台は、”「灯台の父」と呼ばれるリチャード・ヘンリー・ブラントンの設計による最後の灯台で、日本海では初めての洋式灯台” だそうです。その姿はとにかく美麗。個人的には【角島大橋の景色】に勝ります。

この旅で初めて【登れる灯台】の存在を知った私は、ひそかに自転車旅において【16基制覇】を目標に掲げるようになりました。(ちなみに執筆現在、この「角島灯台」以外に「出雲日御碕灯台」「安乗埼灯台」「大王崎灯台」の計4つの灯台をクリア)

気づけばお昼時。昼食を…と思いましたが先の行程を考えるとゆっくりしていられないので、角島特産なのかわかりませんが「アップルマンゴーソフト」をいただきます。ちょっとしたレストもアイテム次第で気分転換ができますね。

インスタの功罪か…【元乃隅稲成神社】

国道191号線はここから東に進路を変えます。つまり山口県の北岸までたどりついたということ。ここからは海岸沿いを離れてしばらく内陸部を走ることに。

角島でまだ行程の半分くらい。いけれど、少しペースアップが必要かも。

元旅行会社勤務の後輩さんのアドバイス「山口に行くなら”元乃隅稲成”には絶対行ってください!」を信じて、少し遠回りになるけれど【元乃隅稲成】を目指してみることに。

ネットで検索すると「海沿いに建つ千本鳥居」がアイコンである【元乃隅稲成】の記事がこれでもかというくらいヒットします。いわゆるインスタ映えするスポットとして近年急激に人気が出てきた場所。

そして私の感想は…「脚を返せ」。(笑)

あくまで個人的な感想ですが、ここは「ザ・観光地」でした

ここにたどり着くためには岬へ続く細いアップダウンをいくつも超える必要があるのですが、分岐のたびに大きな看板で誘導され、気づけば観光バスや車が大渋滞していて、近づきながらも嫌な予感がどんどん大きくなって…

で「着いた!」と思ったら、観光バスようこその大駐車場。一帯に併設された謎の恐竜テーマパーク。そしてちょっと浮いちゃってる千本…いや絶対千本ない鳥居。

「なんなんだ…この世界感は…」と、正直戸惑いを隠せなかった私。観光客は各々スマホを片手に撮影大会。お賽銭?は鳥居の上にある箱に投げ入れるという謎風習。うーん。

あとで調べると、地元の方が40年ほど前に作った比較的新しい神社ということらしく…まあ現地の町おこしには大貢献しているスポットではありますね。

唯一「竜の息吹」と呼ばれる岩礁は一見の価値ありですが、この【元乃隅稲成】は残念ながら私には「がっかりポイント」なのでした。(あくまで個人の感想です笑

ヤバイヨヤバイヨ…からの感激ゴール【旅館 芳和荘】

「全部、あの後輩のせいだ!」とブツブツ文句を言いながら、国道191号線を走ります。スタートからゴールまでこの国道を走るだけなので、迷うことはないんですが、あの神社に立ち寄ってしまったため、予想以上のビハインド。

そう、時は夜。国道とはいえど、都市部でないかぎり「街灯」なんてものはないのが山口県。そしてよりによって、フロントライトのバッテリー切れ…ヤバイヨヤバイヨ…。

長門市~萩の区間では小さな山越えがあるのですが、この状態では走れません。特に下りは恐怖…というか単純に危険。行きかう車のヘッドライトの明かりを頼りに時折ライド、時折ハイクと使い分けながら超スローペースで【萩】へ向かいます。

遠くに明かりが見える。これがどれだけ安心できることなのか。を実感したことで、この旅以降ライトは常に二つ持ち、バッテリーだけは切らさないようにしている私。

そんなこんなで、萩の街にたどり着いたときはあまりの明るさに泣きそうになりました(笑)

さすがにこの時間帯から萩の観光はできないので、まっすぐ宿にチェックイン。今回のお宿はネットで偶然見つけた【旅館 芳和荘】さん。昔ながらの日本建築、旅館のような民宿のような独特の風情がありあります。夜とはいえ、明かりは看板だけというのも惹かれますね。

まずはご主人に遅めのチェックインをお詫び。自転車できたことに加え、門司港から自走できたことにも驚かれました。日曜泊ということもありお客は私以外におひとりだけ、この旅館をほぼ貸し切りです。それにしても風情のあるカウンターだと思いませんか。その理由はブログの「特別編」として後日改めて書かせてもらいます。

ご厚意で自転車は玄関に止めていいことに。これは助かります。しかもちょうどいいサイズ感。

いつも宿には申し訳ないと思いながらも「素泊まり」が基本の私。宿のご主人と相談して、この夜の計画をたてます。で、<宿でお風呂→外食→就寝>という流れで行くことに。お客も少ないので、オーダーが入ってから大浴場にお湯を張るスタイル。準備ができたらお声かけますねー。ということで、それまではお部屋でゴロゴロ&荷物整理タイムです。

いやー「岩風呂」最高でした!実質、貸し切りだし。私の自転車旅はトラブルも多いけれど、こういうラッキーにも恵まれているんだと自認しています。

お風呂上りに「どこかいいお店ありますかねー」と相談して紹介してもらったのが、地元の居酒屋【ぼてこ】。「ぼてこ」とは魚の名前で、たぶんカサゴ。関西ではガシラ。であるとおもう。知らんけど。

居酒屋に寄る前に、近くのコインランドリーでウェア一式を回しておいて、食事してから回収。という黄金パターンを繰り出しつつ、地元の魚介とビールをたしなむ私。「ぼてこ」のから揚げ、美味です。

お酒も入っていい気分で宿に戻って、布団でゴローン。ああ、最高だ。あと、この部屋の感じ素敵すぎ。小物とか思いっきり昭和。

朝には福岡県にいて、気づけば山口の北側にいる不思議。でも自分の脚で走ったのだから大したもの。たった1日の中でも、絶景に感動したり、予期せぬアップダウンに脚がおわったり、暗闇に事故を覚悟したり、とかとにかく密度が濃かった。けれどこの疲れはとても心地よくて、夜のお風呂や食事のありがたさとともに、安堵感の中眠りにつけるというのは、とてつもない贅沢。

日常でこんなに密度の濃い時間を過ごすことは難しいけれど、これを求めちゃうからまた旅に出るんだなあ…。とか思いながら、長い一日を終えたのでした。おやすみなさい。

山口ライド1日目のまとめ

【福岡県 新門司港】から【山口県 萩市】まで、<総距離160km、獲得標高1,600m、実走行時間8時間>という行程。本当に丸1日を走り切った感じです。

今回はただただ「国道191号」を走るだけというシンプルルート。都市部では車の往来が怖いものの、下関以北は快適なルートです。【元乃隅稲成】への立ち寄りがなければ大した山もないので、初心者でも比較的走りやすいと思いますよ。

県内にはほかにも見どころスポットがたくさんあるので、行程の組み方次第でまだまだ楽しめそうなのが山口県のおもしろいところ。気になる方はぜひどうぞ!

そうそう、改めてこの旅は2018年秋の旅であることを申し添えておきます。

続く…。

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