プロローグ
岡山から島根県の出雲まで、1泊2日の自転車旅に行ったときのお話です。
この旅のそもそもの動機は「寝台列車で輪行がしたい!」というもの。この計画はずっと自分の中で温め続けていたもので、この時まさに「チャンスがやってきた」という状況でした。
執筆現在、定期運航している寝台列車は「サンライズ瀬戸・出雲」のみ。東京から高松・出雲を一晩かけて走る寝台特急ですが、高松は大阪からほど近いので、目的地は必然的に「出雲」ということに。
ということで、秋のある日、岡山から出雲までをロードバイクで走り抜き、大阪までの復路に「サンライズ出雲」を利用するという「ツールド秋休み」が開幕することになりました。
今回のスタート地に選ばれたのは岡山市。中国地方のライドの拠点としてはおなじみの場所。そして使用するのもまたおなじみ「日本旅行のバリ得!こだま」です。格安輪行には欠かせませんね。
旅の1日目は、瀬戸内海から日本海へズドンと抜けるルート。県境にそびえる「中国山地」をいかにクリアするのかがポイントになりますが…
今回も早速初日からトラブルに見舞われ、予想以上に脚と体力を使ったライドとなったのです。
スタートの地は「岡山」
新大阪からは1時間もかからずに着いてしまうので、岡山って意外と近くにあるんだと錯覚してしまいますが、その距離約180km。自転車なら1日かかってしまう距離なので、改めて新幹線ってスゴイ!
駅前に立つ桃太郎さん。そして犬、猿、雉のお供たち。そう、ここはまぎれもなく「岡山」です。
朝の岡山駅前には学生さんがいっぱい。そうか、今日は平日だった。大勢の学生さんに見られながらバイクを組み立てるのは少々気恥しい…。なので、さっさと出発しよう!
まずは、駅前の大通りを南下していきます。さすがに岡山市は都会の景色そのもの。道は広々としていてとても走りやすい。
そして地方都市のお約束「路面電車」も。自転車旅では実際に乗ることがないので、いつも羨望のまなざしで見つめるばかり。大阪住まいには新鮮な絵面です。いつかじっくり乗車してみたいものです。
さてさて、目指すは日本海方面なのに、瀬戸内海側に走って来たわけは、この「岡山城」と…
「後楽園」を見ておきたかったからにほかならない!
といいつつ、スタート地でゆっくり観光しちゃうとゴール前に日が暮れてしまうという反省を毎回の旅でしているので、今回は外から眺めるだけです。それでも十分見ごたえがるランドマークでした。
岡山市街にはまだまだ見どころがたくさんあります。きっと岡山駅から半径10km圏内をポタリングするだけでも十分楽しいだろうから、ここへは別でまた来たいと思います。
では、いよいよ日本海を目指して北へと向かうわけですが、1泊2日の旅の最終ゴールは「島根県・出雲市」なので、1日目のゴールはその中継地点となる「鳥取県・米子市」に設定しています。
瀬戸内海から一気に日本海まで縦断するのですが、中央に立ちはだかる「中国山地」をどう抜けるのかが考えどころ。
岡山からは複数のルートが考えられるのですが、今回は「旭川」沿いに北上し、旧街道の宿場町である「勝山」を一旦の目標としましょう。
岡山県の中央をゆうゆうと流れる旭川沿いを快適ライド。自然の景色を楽しみつつ気持ちよく走っていきます。この調子なら、いいペースで進んでいけそう。
…と、思っていたのですが、なんと現地で無情なお知らせが。
「県道30号線、全面通行止」!?
前年の大雨被害は記憶に新しいですが、その復旧工事がまだ続いていたんですね。GoogleMapには落ちていない情報だったので油断していました。こればかりは仕方がありません。
だったらここから、ルートを再構築しないといけませんね…。
「中国山地」を越えて
かれこれ30km走って来たのですが、進路を修正して北西に向かわないといけません。実際、北東に行くルートは多いのですが、米子方面となるとルートは限られてきます。
まずは旭川を対岸へ渡る必要があるのですが…近くに橋がない!?MAPで確認すると数キロ戻らないといけないのですが、仕方ありません。来た道をリセットするのは脚はともかくメンタルに来ますね。(苦笑)
とにかく西へ、と考えると目指すのは「高梁市(たかはしし)」になるなあ。勝山の伝統的建造物は見ておきたかったのに…。
さて、ここからしばらく写真を撮れていないのですが、中国山地のど真ん中の東西ルートは険しいアップダウンの連続で、まさに息つく暇もなし。わけのわからない斜度の市道や県道をスイッチしつつ、ヘロヘロになって高梁市を走る国道180号線にたどり着いたのは、お昼をすっかり過ぎた頃なのでした。
なんとかたどり着いた高梁のコンビニで、ようやくレストをとることができたのですが、なぜかこのエリアはローディーが多い!?
中国山地横断でヘロヘロではありましたが、仲間(?)の姿を見るとなぜかメンタルが少し回復します。話を聞くとこの日は「高梁ヒルクライム」なるレースイベントがあって、皆さんその帰りということ。高梁に入ってやたらとローディーを見かけたのも頷けます。
十分レストをとって脚とメンタルを回復させたら、高梁から再スタート…。と行きたかったのですが、国道の大きな標識「米子→100km」がいきなり心を折りにかかってきます。いや、ここまですでに100km以上走ってるんですが(涙)。
せめてもの救いは「JR伯備線」が、この国道に沿ってずっと米子まで並走していてくれること。最悪心か体がダメになった場合は、輪行で鳥取を目指すことができるのは大きな安心材料なので、とにかく心折れるまでは頑張りますか…!
国道180号線は「高梁川」とも並走しているので、アップダウンが少ない快適ルートだったのは幸いでした。
すでに100kmオーバーからの再スタートで体にもきてるので、時折脚を止めて気分転換。寺や滝、鉄橋など所々脚をとめて立ち寄れるスポットがあるのは嬉しいですね。
そして、いよいよ最後の山越え!
さすがに岡山と鳥取の県境には、高くないとはいえ標高600m級の山々がそびえます。脚も心もボロボロですが、ここは惰性と無の境地でなんとか乗り切ります。なのでやはり写真がない…。
本当は東からアプローチして、中国地方を代表する霊山「大山(だいせん)」をゆっくり眺めたかったんですが、時間的にも予定より2時間以上のビハインド。とにかくここは目的地優先です。
「米子」の夜は暗かった
峠を越えて「鳥取県」に入ったら、あとはひたすら下り基調。かなり疲れ切っているので嬉しいボーナスステージだ。
できればもうペダルを回したくなかったのと、夕暮れが過ぎつつあるプレッシャーから、どこにも立ち寄らずに目的地の「米子」へ到着。
米子といえば「皆生温泉(かいけおんせん)」。山陰を代表する海辺の温泉地の一つです。
本当なら明るいうちに着いて、温泉街を浴衣でウロウロしているはずだったのに、あたりはもう真っ暗になってしまっていました。残念。
あと平日である、ということも暗さの一つの要因だったのかもしれません。地方の温泉地なので、平日は基本的に人が少ないのでお店を閉めているところも多いのでしょうね。
いよいよお宿に到着です。今回も素泊まりコースなので予約していたのはリーズナブルなゲストハウス。その名も「HOTEL KAIKE」。
チェックインして気が付いたのですが、ここは主に外国人観光者向けのゲストハウスのようです。女将さんはロシアの方で客層もロシア系の人が多いみたい。
廊下やロビーで数グループの外国人とすれ違う時に会釈などしてみましたが、明らかに英語圏でない言語と結構なタトゥー率、そしてやたらガタイがいい!…つまりちょっとコワイのでした(笑)。
お部屋は昔ながらの和室。これも外国の方には新鮮なのでしょう。質素な造りと薄暗い蛍光灯は私的にはすごく落ち着きます。
外湯や外食も考えたのですが、すでに20時を回っていて、どこも店じまいの模様。いいお店が見つからなかったので、ここはコンビニに頼ることにします。
本日2回目のコンビニ飯。冬なのでアツアツのおでんが嬉しい!そして少しはご当地飯をということで、大山どりのおにぎりを購入。体がヘロヘロで食欲もそこそこ落ちていたのでしょう。今見ると結構少ない量ですね。
部屋で簡単に食事を済ませたら、お宿の小さな露天風呂でゆったりと。幸いなことに私一人の貸し切り状態でしたが、今思うとロシア人との裸の付き合いもしてみたかったかも。
そして、部屋にもどって布団に入ると一瞬のうちに眠りに…つけないじゃないか!
というのは、隣室のロシア人が深夜まで大騒ぎしていたから(笑)。生活様式やマナーはお国柄でしょうね。これもまた旅の醍醐味として味わっておきましょう。
それでは、おやすみなさい。
1日目のまとめ【岡山~米子】
旅の1日目、岡山~米子への自転車旅は「走行距離 206km、実走行時間 9時間30分、獲得標高 1,400m」という結果に。
岡山から旭川沿いに北上する計画が、まさかの通行止めによって50km近く迂回することになったのが効いていますね。
この旅での教訓なのですが、150kmを超えるライドは、ただ「走るだけ」になっちゃいます。
実際に旅をしていると、素晴らしい景色やおいしい食事、神社仏閣や史跡、そして人との出会いなど、さまざまな発見があるのですが、それは主に、脚を止めて時間をかけて体験することで生まれるもの。
1日の走行距離が150kmを超えると、時間的には7時間以上、休憩を含むと8時間は単純に消費されてしまうわけなので、距離が延びるほど体験や発見はスポイルされてしまいます。
今回の走行距離は200km超。予定外とはいえ本当に走っているだけという修行のような行程でした。実際に写真も非常に少ないですしね。
数々の自転車旅を経ての私の結論は「時速20km/hで5時間 + 体験・発見に3時間」というのがロングライドの黄金律である。ということです。
明日はしっかり知見を広げよう!と固く誓って、「出雲」を目指す旅の1日目を終えるのでした。
つづく…。
コメント