<鳥取・島根>米子から出雲へ!中海と宍道湖を横断する縁(えにし)の旅【ツールド秋休み】山陰編その②

ツールド×旅Life

スマホのアラームが朝になったことを教えてくれる。窓のない薄暗い和室では外の天気がわからないけれど、少なくとも雨は降っていなさそう。

昨晩買って冷蔵庫で冷やしておいたサンドイッチとコーヒーは幾分か無機質に感じるけれど、こういう朝食もまた、何が起こるかわからない旅の醍醐味かもしれない。

なんてことを思いながら、旅の2日目となる今日の準備を整えていきましょう。

お宿のちいさなテレビで現地の話題や天気を確認しながら、着替えや荷物のパッキング。スマホではマップを検索して今日のルートを再確認。

今日は、この鳥取県の皆生温泉から島根県の出雲大社まで約100kmの道のり

昨日はまさかのルート変更で200kmを超えてしまい、観光や食事が十分にとれなかった反省があるので、今回はゆっくり堅実なルートを選択しないといけません。

鳥取と島根の境目には汽水湖である「中海」「宍道湖」があるので、是非とも見ておきたいので、今回は日本海側を行かずに汽水湖沿いに進むことにしましょう。

ザザーーーン!

薄曇りの空と白波は、まさしくイメージする日本海のそれですね。

海沿いにある皆生温泉の街も、明るくなって初めて確認することができました。1日目のライドがキツすぎて温泉を堪能できなかったことが悔やまれますが…。

ここからしばらくは、日本海を眺めながら国道431号線に沿って走っていきます。

国道沿いには海の幸の情報が盛りだくさん。海岸沿いの街にして正しい風景の一つですね。

朝一番の立ち寄りスポットは「境港」。水木しげる先生の「ゲゲゲの鬼太郎」で町おこしに大成功した山陰の代表的な港町。冬にはカニ漁の基地としても有名ですね。

皆生温泉からほんの数キロ。軽くウォーミングアップをするつもりで自転車を走らせて、着いたのがここ「JR境港駅」

駅舎の壁面と車両にまで、しっかりと描きこまれた「鬼太郎」たち。

駅前からまっすぐ800m続く商店街は「水木しげるロード」としてあまりにも有名

幸いにして早朝の到着だったので人はまばら。ロードバイクでゆっくり流せるだけの環境があったので、ここでゆっくり観光です。

お土産屋さんを中心に、海鮮物のお食事処、雑貨屋、妖怪神社など、歩いて半日は楽しめそうな通りですね。自転車仲間で訪れるのも楽しそう。

原作ベースの猫むすめは…コワイ。

最近のアニメ画ではヒロイン位置で萌えキャラ(古っ)として描かれているので、ちょっとしたカルチャーショック(笑)。でも、しっかり妖怪ですからね。これが正しいのです。

さすがに朝食が質素に過ぎたので、朝のパン屋さんで追加の栄養補給。

ストリートのベンチで妖怪の像を眺めながら、コーヒーとともにゆっくりとパンをいただく素敵な時間を過ごしたら、そろそろここを出発です。

中海の埋め立て地「江島」へ向かうこの橋は「ベタ踏み坂」で有名なあの橋。ちなみにここが鳥取と島根の県境になっています。

ここで種明かしですが、ベタ踏み坂の有名なあの写真は”望遠レンズを使った圧縮効果”のトリックなんですね。この坂、いうほどのものではありません。ローディーなら誰しも登れる6%くらいの坂なので、行かれる方はお気軽にどうぞ。

とか言いながら…でも記念にね。という感じで旅のルートに組み込んでいた私でした。

橋の頂上付近はアクリル板が貼ってある展望ゾーン。たしかに高い位置にあるので、見ごたえはあるんです。

埋め立て地といえば、丸太の材木倉庫。というくらい、どこの港にもある光景。こういう断面構図も大好きなので撮らせてもらいました。

江島から対岸に向かうルートで、面白かったのがこの堤防道路。県道338号線、通称「美保関八束松江線(みほのせきやつかまつえせん)」です。

中海を縦断する低い(これ大事)堤防の上を走る道路なんですが、海面にとても近く左右に遮るものがない道路は、本当に気持ちのいい走行感。まさに「海中道路」と呼ぶにふさわしいルートです。

堤防道路から遠くを見ると、雲に隠れた頂が。あれが中国地方に誇る名峰「大山(だいせん」です。

本当は昨日走っておきたかったので、眺めながらも少し心残り…。

中海の真ん中にあるもう一つの島「大根島(だいこんしま)」は、牡丹で超有名なところ。らしい。

季節的には外れていたので、牡丹の花を見ることはかないませんでしたが、一面の牡丹園が印象的でした。季節ともなればそれは美しい光景になるのでしょうね。

汽水湖である中海は、波もなく本当に穏やか。静かな景色におもわず脚を止めてしまいます。

島根県の中心に入ると、かわいいゆるキャラの絵を見かけるようになります。出雲大社か松江城か、ともかく大きな屋根を頭にのせた彼(彼女?)の名は「しまねっこ」。覚えやすくかわいいキャラですね。

島根エリアでまず目指すのは、現存十二天守のひとつである「松江城」

その麓で出会ったのが、明治時代に建てられた迎賓館である「興雲閣。淡いミントグリーン調の明治建築に思わず引き込まれてしまいました。

歴史的には明治天皇の行在所として建築されたものらしく、当時のモダンである和洋式調の邸宅となっています。

おそらくこの場所も上流階級のパーティーやダンスホールとして活用されたんだろうな、とイメージを膨らませつつ内観させていただきました。

そして…どーーーん!と「松江城」

国宝にして現存十二天守のひとつ。白と黒のモノトーン調の天守は、落ち着いてシンプルに美しく、なにより「質実剛健」という言葉がよく似合います。

貴重な機会なので、ここで「入らない」という選択肢はありえません。

江戸時代のままの内装は、当時の生活と軍事様式を物語っています。

現代においてはそうそう触れることができない貴重な機会。こういうのも旅の学びとして大切なファクターなのです。

400年以上前から、移り行く松江の街をここから見守っている天守。壮大な時間の流れの中では、人の営みなんてちっぽけなものなんでしょうね。

一通り天守を見学した後、城郭から駐輪場へ下っていたはず…。

あれ?私、タイムスリップしちゃいました!?

あれは紛れもない、江戸時代の人ですよ。まさかこれが「異世界転生」というやつですかー!

…と思ったら、武将が自販機を利用していたので、残念ながら現代であるということが確認できました。(笑)

城壁の石垣には、ハート形の石が。見つけたら幸せになれるとか…隠れ要素として有名なようですよ。

松江城の城下町は、武家屋敷街になっている見ごたえのあるエリア。

しかし先を急ぐ必要もあるので、大通りに沿ったそれらしいゾーンを通過するだけになっちゃいました。

世には「城下町」「門前町」「宿場町」など、古来の生活様式が色濃く残る場所があるので、そういったエリアをじっくり回ることを目的としたライドも面白いと思います。

お昼ご飯はご当地ものを…と考えていたのに、入ってしまったのは「大阪王将」

なんでやねん。と自分につっ込みつつも、匂いと摂取カロリーに勝てなかった私。

ここからは「宍道湖(しんじこ)」に沿って、最終目的地である「出雲」を目指します。

県境の中海から大橋川でつながるこの湖も、海水を含むれっきとした汽水湖です。波のない穏やかな水面と遠くまで続く湖岸の静けさが本当に綺麗です。なんでも宍道湖で見る夕陽はとても美しいとのこと。

そんな中、突然現れたスポーツ自転車専門店「タクワサイクル」さん。お店には入りませんでしたが、とにかく店頭(屋外)に高級バイクがところせましと並んでいる様子にびっくりしました。

湖北沿いの国道431号線を走り抜いて、今日の目的地である「出雲大社」に無事到着!!

米子からここまで約80km、昨日のことを思うとやはり余裕があって観光にも一定のウエイトを置けています。しっかり参拝できるのは行程のおかげでもあります。

縁(えにし)、縁結びの神様。特にこの大きな「注連縄(しめなわ)」はあまりにも有名ですね。

その昔は、注連縄に硬貨を投げて、注連縄に刺さったら良い。というような風習もあったと思うのですが、安全面等の事情でなくなったのか、そもそもが間違った風習だったのか…。

個人的には「出雲大社」「宍道湖」「松江城」といえば、NHKの連続テレビ小説「だんだん」で知っていつかは訪れたいなと思っていた場所なんです。

そういえば、この出雲大社に「だんだん」のジャケットを着た方を見かけたのですが、あのドラマは2008年だったはず。少なくとも10年以上前だったので少し不思議、というか、これも何かの「縁」だったのかも知れませんね。

さて、2日目のライドは、思いのほか快調で快適。時間にもたっぷり余裕があります。

一旦、目的地である「出雲大社」をクリアしたのですが、ここでもう一つの裏目標にチャレンジすることに。

それは、この出雲の北西端の岬に立つ「出雲日御碕灯台(いずもひのみさきとうだい)」です。

海岸線を走る、県道29号線「みさきうみねこ海道」に沿って、岬へのヒルクライム。

片道8km、適度なアップダウンのある道を登っていくと…

どーーーん!

非の打ちどころのない、まさに白亜の灯台。「出雲日御碕灯台」に到着です。

明治時代に建設されたこの灯台は、日本で最高(塔高43m)の石造灯台であるうえに、なんと「日本ののぼれる灯台16基」の一つでもあるのです。

しかし…ついた時間が16時30分。なんと入場締め切りの時間だったので、残念ながら登頂は叶わず…という結果に。

これも旅のよくある出来事。くよくよしても仕方がないので、気持ちを切り替えましょう。「またくるぜ、日御碕灯台。あばよ!」と、柳沢慎吾ちゃんバリの爽やかな捨て台詞を残して、この地を後にします。

日御碕から広がる日本海。

前日は岡山駅にいたのに、今は島根の端っこで日本海を眺めているという不思議。けれど紛れもない現実。

時には自分の創造やイメージを現実が追い越してくれるのも、旅をしているなあ、生きているなあ、なんていう実感につながるんですよ。

日御碕からはずっと下り基調。帰りの鉄道の始発駅である「JR出雲市駅」にあっさり到着です。

あ、よく見ると駅舎が出雲大社っぽいですね。

発車までずいぶん時間があったので、先に夕食を済ませておくことに。

…で、選ばれたのは「すき家」さん。駅周辺にはいろんな食事処があったんだけど、これは時間的にファーストフードでないと安心できなかったからですね。

でもさすが全国区。当たり前のように美味しくいただきました!

それでは輪行準備を整えて、帰りの列車をホームで待ちましょう。

旅の2日目は、総距離124km、実走行時間5時間59分、獲得標高640m、という結果に。

1日目のことを考えると、やはり時間と距離と旅の内容バランスがちょうどいいですね。

さて、2日目の自転車旅自体は「出雲大社」と「日御碕灯台」でゴールをしていたのですが、裏の裏、つまりはもう一つの旅の目的がさらにあるのです。

ここ、JR出雲市を発車する列車といえば…

ということで、第3部につづく!!

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