<火ノ国>熊本・阿蘇ライド「阿蘇パノラマライン」を往く! 【ツールド秋休み】1日目

ツールド×旅Life

プロローグ

JR西日本の「サイコロきっぷ」がお得らしい。という話を職場で耳にしたのが9月の下旬。

なんでも1回5,000円でサイコロを振る(≒ガチャを回す)と、必ずJR西管内の指定の駅への【新幹線or特急指定席付き乗車券(往復分)】が当たる。というお得かつ面白いシステム。

輪行主体の自転車旅では知らない路線や土地を巡るのが面白いわけで、行き先がどこになるか全くわからないミステリーツアー的なシステムには個人的に可能性しか感じません。

これを振らないと後悔するにちがいないので、「サイコロきっぷ」の締め切り日である9月30日に思い切って5,000円の課金ガチャ!

で、出た目は…なんと「尾道」!…と思ったら、サイコロが再び回りだしたぞ!?どうやら「ダブルチャンス」!。そして出た目は…なんとなんと「博多」!!

当選倍率1/36のレア駅を引き当ててしまいました。新大阪から博多まで往復の新幹線指定席+乗車券が5,000円って…正規運賃の82%OFFとか正気じゃない。JR西日本、大丈夫か…??(笑)

ちなみにサイコロきっぷの申し込みは9月末まで、切符の有効期限は10月末まで。あとは自分の好きなタイミングで日付や時刻のネット予約を行うだけ。うーん夢が膨らみます。

ところで「博多」にはこの冬訪れています。また「福岡県」としても過去に走ったことがあるので、「博多」を拠点とした旅は、今の私には少しイメージしにくい…(※)

(※)詳しくは【ツールド冬休み 壱岐島編】【ツールド秋休み 山口編】を参照。

そう考えると、この格安すぎる切符を足掛かりに九州の奥に踏み込むのも良さそう

ということで選ばれたのが、私の白地図の空白地であった「熊本県」目指すは巨大火山&カルデラ地である【阿蘇山】です。地球の原始の息遣いを体感できる「火ノ国・熊本」にいざ出発です。

旅の概要

秋の良い季節に日帰りなんてもったいないし、距離的にも宿泊が前提なので、今回は大阪~熊本を新幹線輪行する1泊2日の旅です。

先に書いたように、目指すは「阿蘇山」。島原や天草も魅力的ですが、巨大なカルデラ地形は人生において必ずこの目で見ておかないといけません。

予定の行程はこんな感じ。

熊本駅から阿蘇までは約30km。片道1.5時間を見ておけば、あとは阿蘇でのライドが存分に可能とみています。1日目に阿蘇の中心地「阿蘇五岳」を1周、2日目にはカルデラ地の外壁となる「外輪山」を回って熊本に帰着するつもり。

という、現地の様子をまったく知らないで書いたのがこのプランですが、現実はそう思い通りにいくわけもなく…。

ここで阿蘇ライドを計画する方のために先に書いておきますが、「阿蘇は最低1泊2日、できれば2泊以上を見込んでほしい」というのが私からのアドバイスです。

旅のスタート

AM6時25分新大阪発 鹿児島行 さくら541号に乗ってまずは博多を目指します。到着予定は9時04分。

そうそう、輪行なので「特大荷物置き場」の利用も外せません。本当は鹿児島行のこの便に乗り続けて熊本を目指したいけれど、サイコロきっぷの特性上、いったん博多で下車します。

車内でのお仕事の一つ目は「九州新幹線ネット予約」で博多~熊本のチケットを購入すること。正規より500円程度安くなるので必須です。もっと早めに決めておけば「早割り7」とかでもっとお安くできたけれど、いつも思い付きになっちゃうので。

あと、旅の備忘録として「博多駅」の特殊性を。博多駅は「JR西日本」と「JR九州」のターミナル駅なので、チケットの受取(購入)場所が会社ごとに分かれています

今回、車内で予約した博多~熊本間のネット予約がみどりの券売機でエラーがでて受け取れなかったのですが、よく見ると「ここはJR西の券売所です。JR九州管内の切符は購入できません」との表示が。なんと改札をはさんで対面にJR九州の券売所があって、そちらで発券しないといけない。タイトな乗り継ぎで軽くパニックになったのですが、博多駅ご利用の際はご注意を。

博多から熊本は約40分。感覚的には大阪~岡山の距離感に近いですね。金額的にも同じくらいですし。

なので、あっという間に熊本につきました。

駅から早速、くまモン、ワンピース…熊本のコンテンツ力は高そうだ!

そして10時30分に輪行解除、いよいよ旅のスタートです。

阿蘇を目指して、30km

地方都市の路面電車が大好きな私。駅前からさっそくテンションが上がっています。自転車旅では乗車できないのが毎度もったいない!

それにしても10月も半ばだというのに、この日は暑かった!予報では最高気温は30℃…ってまだ夏?

阿蘇までいくと標高が上がるのでもう少し涼しいんだろうけど、とにかく暑さに弱い私は夏ウェア装備でスタートします。

先日、四国の石鎚山&UFOラインで補給の大切さを実感しているので、コンビニで多めの補給。さすがにここまでの暑さを想定していなかったのでシングルボトルですが、1Lのスポドリとカロリーメイト×2、塩ようかん×2、ランチパック×1を買い出し。

ちなみに朝食は食べてきましたが、腹持ちが不安なので「ばくだんおにぎり」を購入。これって熊本名物だったかしら??でもまあ少なくとも九州発祥だったようにも思います。

熊本市街は都会。国道には多くの車やバスが走っていて、信号も多くなかなか落ち着いてライドすることができません。

こういう時は大抵、すぐ横に並走する県道や市道があったりします。きっとこれは地方の特性で、発展してきた街に大きな道路を通すのに、旧来から活用されてきた旧道を残す形になるからでしょうね。

ということで、県道をのんびり走っていきますよ。

都会エリアはだいたい半径10km圏内。これを抜けると農村の長閑(のどか)な風景になってきます。藁のロールなんて大阪でみることはないので、見入ってしまいます。県道でカメラを構える私はよそ者感丸出し。

阿蘇までは基本的に登り基調。1%台の坂とも言えない坂なので、快適に進みます。農道を進みあたりから視線を遮る建物がなくなると…

阿蘇の山並みが見えてきた!!

麓に見える集落は「風の谷のナウシカ」の「風の谷」みたいで、なんだかとてもいい風景。

頭の中では理解できているものの、想像より大きな台地の隆起はそこから先が火山地帯であることを感じさせてくれます。

側道の看板が、いつの間にか阿蘇エリアに入ったことを教えてくれます。まだ距離はあるものの、道の先に見える山々が自転車旅人の心を惹きつけてやみません。

熊本駅から約30km。阿蘇の外輪山の切れ目にある「立野」まであと少しです。

時刻は13時。ここにきて絶好の補給場所を発見。

「おべんとうのヒライ」はその名のとおり…ではなく、お弁当販売のみならず、コンビニ要素や食堂設備も兼ねそろえた地元のオアシス。営業途中のビジネスマンはもちろん農家の方もトラクターで乗り付ける、さながらアメリカ西部のドライブインのような存在です。

この日泊まったお宿の方にそんな話をしたら、「有名なご当地産業で、熊本のソウルフードですよ」となんておっしゃっていました。

って、お弁当とちゃうんかーい!

と突っ込んでおいて、食堂利用。

ライド中のカロリー・塩分・水分を効果的に補給するために…いや、正直に言うと「熊本ラーメン」を食べておきたかったのです。

数あるラーメンメニューから選ばれたのは「山ちゃんラーメン」。山ちゃんのことは存じあげませんが有名な方(品?)の様子。ヒライの物販ではこれのカップ麺も「あの山ちゃんラーメンがカップ麺に…」って売られていました。

それにしても、これは私のイメージ通りの「熊本ラーメン」。豚骨スープに黒いマー油が浮かんでいて香ばしい香りが…麺が硬めなのも特徴なのでしょうか。印象は「パンチのきいたさっぱり豚骨」、うーん美味でした。

「おべんとうのヒライ」おそるべし…。

「新阿蘇大橋」で大切な気づき。

熊本駅から県道~国道を経由して、阿蘇の玄関口である「立野」へ到着。

カルデラの切れ目にかかる「新阿蘇大橋」を渡ると、いよいよ阿蘇エリアです。

ちなみに熊本駅から自走で30km程度ですが、そのままJR豊肥本線に乗り換えて「立野」まで輪行というのもアリです。というのも、阿蘇エリアは広すぎて時間がいくらあっても足りない状態なので現地の滞在時間を確保する作戦も大切。けれどその分、阿蘇山の遠景や近づいてくる感などの旅の醍醐味は少々スポイルされてしまうけれど。

阿蘇エリアの関所となる「新阿蘇大橋」は、かなり高低差がある渓谷に架けられた新しい橋で、この一帯の大動脈となっています。

自転車でこの橋を渡っていると、渓谷の下の方には旧道と古い橋が見下ろせます。「あちらの方がルートとしては楽しめたかなあ…」なんて思っていましたが、阿蘇側の展望所「ヨ・ミュール」で新橋を眺めている時に、ボランティアガイド(以下、ガ)の方に話しかけられました。

私「新しくて立派な橋ですね!」
ガ「2021年の3月に完成したばかりなんですよ。」
私「最近じゃないですか。旧道は細そうなのでずいぶん便利になったんじゃないですか?」
ガ「2016年の熊本地震のことはご存じですか?実はこの上流600mほどのところに、かつての阿蘇大橋があったんですよ。」
私「…あっ(察した)」
ガ「地震の際に、元の大橋が崩落してしまって熊本へのルートが断たれたんです。幸いにして旧道の橋は崩落を免れたので部分補修をしてなんとかルートは維持できたのですが、大橋がないと阿蘇の生活に支障をきたすので、新橋の建設が急がれたのです。」
私「それで、この場所に新橋を架ける形になったんですね。」
ガ「そうなんです。谷を見てもらえればわかりますが、崩落の跡がわかるでしょう。そしてあの山の頂上からすそ野までの木がない部分も、あれは地滑りの跡なんです。」
私「…(絶句)」
ガ「この橋は、365日、24時間の工事のたまものなんです。遠くから来られたみたいですので、観光を楽しんでくださいね。その中でもしよければ震災の被害のことも見ていただけたらと思います。」
私「ありがとうございます。何もできない身かもしれませんが、しっかり見て学んでいきたいと思います。」

渡ったときには、味気のない高規格の橋だなあ、なんて思っていましたが、この「新阿蘇大橋」は震災からの復旧の象徴。この旅のスタート地である阿蘇エリアの入り口でこのお話を聞けたことは本当に価値がありました。

個人的には、阪神淡路大震災と大阪北部地震を経験しているので、地震の恐ろしさや被害の大きさは理解しているつもりでしたが、遠く九州の地でも同じように震災の被害があったことを、恥ずかしながらこの時まであまり意識することはありませんでした。

この旅の視点を少し違ったものにしてくれた出会いに感謝。気づかない、学ばない旅なんて旅じゃない。

「阿蘇パノラマライン」をヒルクライム。

…暑い。(しつこい)

阿蘇エリアは想像以上に高低差があってメリハリがはっきりしています。底地となる盆地が標高400m程度、阿蘇山では1,200mまで上がるので、基本的には涼しい、または寒いだろうと覚悟してきたものの、現地の気温は27℃。ちなみに10月中旬。大阪の真夏よりはましとはいえ、頑張りすぎると熱中症になるやつです。そもそも天気が良すぎ。それはそれでありがたいけれど。

じゃあ、寄るしかないじゃん。と大きな独り言をつぶやいて、わかりやすい看板のお店に突入です。

説明不要の「南阿蘇自然派ソフト」です。こういうところはトッピングなしのシンプルなソフトが一番と心得ている私。ちなみにコーン派でもワッフル派でもなく、カップ派です。

小さなお店の庭には、子猫がたむろしているという長閑すぎるロケーション。パラソルの日陰でネコに話しかけながらソフトクリームを食する全身タイツ&サングラス男は紛れもない不審者でした。

あー、おいしかった!

ここからは、南阿蘇を横断する国道325号線を走り、阿蘇山上につながる県道111号線、通称「阿蘇パノラマライン」に乗り換えて、一気に阿蘇山ヒルクライムモードに切り替わります。

旅ライド本気モードのスイッチオン!!

「阿蘇パノラマライン」の序盤は針葉樹林に囲まれた日陰ゾーンなので体温を下げられるのは嬉しいところ。

ほんの2~3kmを過ぎると木々は姿を消して一気に斜度もあがってきます。火山地帯だけあって樹木よりは下草やススキが中心になるのでその景色は独特です。

カーブを抜けると姿を現す「阿蘇五岳(あそごがく)」のシルエットは圧巻。「うおお!」とついつい脚を止めて撮影タイムに。そういう意味では疲れることもなく、でも時間はかかるヒルクライムでした。

ところどころ、話を聞いていなかったらきっと気づいていなかっただろう、崩落や地滑りの跡を確認します。見た目穏やかな斜面でもこれだけ形が変わるのだから、揺れの大きさは相当なものだったのでしょう。

「うおお…おおっ!!??」と言語がゴリラ化していますが「阿蘇パノラマライン」から見下ろした景色がこれ。

カルデラ。社会の授業でならったやつ。カルデラ。

知識として知ってはいても、テレビでみたことはあっても、自分の目で実際に確かめないと本当の意味で理解できないことがここにあります。

まさに「地球の呼吸の跡」。火山活動が陸地を造り、その地形によって人は生かされているのです。きっと。

ああ、語彙が足りなさすぎる…。とにかくスゴイ。

旅をしていると各地で観光マップの看板を見ますが、阿蘇においてのマップは本当に大切。あまりに広大な火山地帯は周りの360°が絶景で、ともすれば今自分がどこにいて、何を見ているのかさえ分からない状態に陥ることがしばしば。

こうやって位置関係を示してくれると、ああ今見ているのはここなんだ。と理解することができるのです。こんな看板に頼る旅は初めてだ。

…というのが、まだ中腹の展望所での出来事。ここからまだまだ登っていきますよ!

牧草地。そして牛。

火山地帯では、噴火による延焼と火山灰が重なる地質で樹木が育たないから、下草中心の牧草地帯になる…というのが私の仮説。

とにかく火口に近づくほど過酷な環境であるはずが、ある意味では穏やかな景色になっていくわけです。

今まで登って来たどの山とも違う景色。

もうなんだか…地形が…。とにかく自然の力を強く感じます。

パノラマライン唯一のトンネルを抜けると頂上が近づいてきた証。

標高が1,000mを越えてきたところでこの景色。ああ、なんか見たことのある画ですが、実際の感動を伴う景色の説得力はスゴイ。これが阿蘇山です。

そして…

どーん!! 噴煙だーーーーー!!!

これが見たかった!

あの頂を見に行くぞ!と、さらにテンションを上げてペダルを回していきます。

阿蘇山上で、自然の雄大さに触れる。

ほどなくして、パノラマラインの一端のゴール「阿蘇山上ターミナル」に到着。この時点で16時過ぎ。14時に新阿蘇大橋を後にしたので、ここまで約2時間。旅の計画はすでに大きく狂っています(笑)

噴煙のあがる「中岳」の火口を見ることがこの旅の目的なのですが、ここからはバスで行くも良し、徒歩で行くも良し、そして自転車で行くも良し。という素晴らしい環境。

ここはもちろん自転車で行くに決まっているじゃあないか!

…ガーン。

紛れもないレッドライン。「立ち入り禁止」の赤色ランプと締め切られたゲートが世の非情を教えてくれています。

地球の息遣い、火口の噴煙とマグマの熱量を実際に感じてみたかった…。

じつは、この山上火口は日によって条件がばらつきます。火山ガスに一定の有毒性があるうえ噴煙の量や風向きによって、その都度安全の確保が必要なわけで致し方ないところ。むしろコンプラの時代において、それでも条件の良い日には近づいて観察できるという条件を作ってくれているだけ、ありがたいと思わないといけませんね。

ほんの少し先からは、噴煙のあがる頂が。熱と灰で追われた一帯はまさに「死の野原」になっています。きっとあのあたりまで登れるんでしょうね。うーん、じかに見ておきたかった。

一方で、反対側を望むとこの景色。活動を終えた火山は緑に覆われた、なだらかで優しい山の姿をしています。このギャップがすごい。

ちなみに山頂には火口行きのシャトルバス乗り場があったのですが、まるっきり昭和のままの姿。きっと大昔から阿蘇観光の中心を担ってきたのでしょう。少しノスタルジックな昭和の観光産業の名残を垣間見ることができました。

看板の表示がずれていたり、窓ガラスが割れたままになっていたり、ドライブインの方はすでにその役目を終えているようにも見えます。これが経年によるものなのか、地震の被害によるものなのか…

火口へは近づけなかったものの、山頂の観光を一通り楽しんでだので、再び「阿蘇パノラマライン」を進みましょう。

山上なのに平らな大地。ススキの野に果てしなく続く一本道。阿蘇特有の地形は、他の山々では見ること感じることができない光景ばかり。

とにかく自然力がすごすぎる。立ち止まってカメラを構えるばかりで、なかなか先に進めませんが…これでいい!

すでに予定を2時間以上オーバーしているわけですが、旅ではその瞬間でしか出会えないものであふれています。予定はいつでもアレンジ可能、「今」を大切にすることが私の旅のポリシーです。

とかなんとか言いながら、ススキ野原の一本道をゆるゆる進んでいくと、次のポイント「草千里ヶ浜」へ到着。

山上の大きな盆地に一面の緑の草原が広がります。これも火山活動でできた地形、一つのカルデラと考えることもできそうですね。

遊歩道もあり草原の中を歩くこともできますが、ここにはやっぱり「馬」が似合う。さすがに乗馬まではしませんでしたが「天上の草原」というにふさわしいロケーションでした。

そしてここにも昭和感あふれる建造物が。

先ほどのドライブインと似た様子ですが、補修を行っているところを見ると、きっと地震被害からの復旧作業なのでしょう。

本当は学びのために立ち入ってゆっくり見学したかったのが「阿蘇火山博物館」。予定時間をオーバーしているので入場は諦めましたが、きっと見てきた光景の真実がわかったはず。

ここから少し登ると「草千里展望デッキ」があるのですが、どうやらここが阿蘇パノラマラインの最標高のおおよそ1,200k地点の様子。

ここからの眺めもまさに絶景!「阿蘇五岳」のほぼすべてが見渡せる絶好の展望エリアでした。

赤く染まる草原を眺めて。

展望デッキから阿蘇の絶景を堪能しつくしたので、いよいよ峠を越えてダウンヒルに突入です。

一気にスピードを上げて麓まで下るつもりが…何度もブレーキをかけざるを得ない状況に。

とにかく、ところどころに見過ごせない絶景エリアが広がっているので仕方ありませんね。

車道脇の茂みには、ところどころ人が通れるように踏み固められた小さな入り口があったりして、そこを入ってみると…

異世界。

原始の地球でしょうか。ここは。

野原…草原…いや、どれとも違うなあ。この広大な光景を、私はなんと呼ぶのか知りません。

自分はなんてちっぽけな存在なんだろう…バイクを立てることすらおこがましくなる、圧倒的な大自然の姿を前に佇む私。

気がつけば、陽が大分と傾いてきました。パノラマラインから麓を見下ろすと熊本の街がオレンジ色に染まりつつあります。

そして、夕陽を受ける阿蘇の姿もまた美しい。

広大な金色の野原が、徐々に赤く染まっていきます。視界を遮るものはなく、台地と山影だけが広がる空間。

太陽がこの位置になると、およそ10分もあれば陽が沈んでしまう。ということを今までの旅の経験で知っているので、ここは場所を動かず、移りゆく景色の変化を見ることに専念。

にしても、ため息しか出ない。もっとこの時間が長く続けばいいのに…。

ペンション あかね雲

夕陽を見送った後は、パノラマラインを気持ちよくダウンヒル。

というか、本当は日が暮れる前に今日の宿にたどり着かないといけないので、この時点で相当焦っています。山中の暗闇のヤバさは何度も体験してきているので。

幸いなことに、宿泊地まではずっと下り基調。暗くなる前にたどり着くことができました。

ここに来るまで知らなかったのですが、本日の宿泊地は「南阿蘇ペンションのんびり村」というわかりやすいエリアに立地していました。迷わずに済んだのは本当にラッキー。

きちんとお宿の方向が示してある。なんて親切なんだろう。ペンション村の雰囲気もなんだかあったかくていい感じ。

ほどなくして、本日の宿泊地「ペンション あかね雲」さんに到着。チェックインは最も遅い18時に設定していましたが、奇跡的に遅れることなく時間ピッタリ、ギリギリセーフ!お宿と客の距離感が近いペンションだけに、迷惑をかけるわけにはいきません。

そして、サイクルラックがあることにも感動!きっとサイクリスト御用達のペンションなんだ。…と思っていたんですが、お宿の奥さんいわく、私が初めての自転車客でサイクルラックは初めて活用されたとのことでした。この日までは便利な「布団干し」として活躍していたそうです。(笑)

お部屋は贅沢にツインルームをご用意いただきました。カウンターの帽子掛けやハンガーは自転車乗りには地味にありがたい設備です。

到着後は先にお風呂をいただいて、さっぱりしてから食事タイム。

今回はペンションを選んで正解。食事面で考えると阿蘇の山中で素泊まりというのは中々にリスキーなので、夕朝食つきのお宿の確保は結構大切。中でもご当地の肉や野菜を使ったメニューやボリューム感が自慢のペンションは阿蘇ライドにもうってつけです。

疲れた体に十分なカロリーと栄養を与えてくれる、実に素晴らしい夕食をいただきました!!

ペンションのもう一つの魅力は、お宿の皆さんと気さくにお話ができること。食事をしながらいろいろな話題でなごめるのも一人旅にはちょっと嬉しい時間。

実際に現地の方の話を聞くのはいろいろと勉強になるし、翌日のルート考案のヒントを得たりすることもできます。

以下、お宿の方とのお話をかいつまんで。
・自転車乗りの宿泊は初めて。実はサイクルラックの使い方を初めて知った。
・8月にも大阪からの宿泊者アリ。その人も「サイコロきっぷ」で博多が当たって熊本まできた。
・オーナーご主人は今年大阪マラソンに出場予定。サイコロきっぷが羨ましい。
・外輪山のミルクロードは新阿蘇大橋が完成するまでは、震災後に阿蘇から出るメインの道路だったので交通量が増えて、実は観光どころではなかった。
・「おべんとうのヒライ」は熊本のソウルフード。
・帰りに博多によってラーメンを食べるなら「元祖長浜ラーメン」がおススメ。
…などなど。

旅先によってはビジネスホテルの方が便利だったりするけれど、阿蘇のような自然の下では民宿やペンションの方が旅の満足度が上がる気がします。

アットホームな雰囲気の中、おいしい料理と少しのお酒をいただきながら、お宿の方と穏やかな会話を楽しみ、疲れた体を癒して早めに就寝する。うん、旅先での理想の宿泊スタイルですね。

それでは、おやすみなさい。

阿蘇ライド 1日目のまとめ

冒頭にも書きましたが、阿蘇ライドをするなら最もコンパクトで1泊2日、可能なら2泊以上を強くお勧めします。また、熊本駅からJR豊肥本線で立野駅まで輪行というのもダイヤによっては選択すべきでしょう。

というのも、記事を見ていただくとわかると思いますが、阿蘇のコンテンツ力が高すぎて思う通りにライドが運びません。(真にトレーニング目的なら別ですが)

私の予定では、この日パノラマラインを走ったのち、阿蘇五岳を時計回りに一周して宿に着くという120kmコースで考えていたのですが、実際の走行距離は半分の60km超。これはそれだけ脚を止めるタイミングが多かったということ。あと、単純にアップダウンが多いので獲得標高も1,300m超と脚にきます。

それでも十分以上に1日目を満喫できたので後悔はありません。とにかく「阿蘇パノラマライン」に入っての絶景、そして自然の驚異は一見の価値アリです。

というわけで、次はいよいよ2日目です。どうなることやら。

つづく…

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