アラームもなく、なんとなく6時台に目が覚めるのは日常習慣。
昨日のような厳しめのライドであってもそこは変わらない様子。習慣とはなんとも恐ろしいもので。
さて、ウェア類もほぼ乾いているので今日のライドも問題なし!
とはいえ、この日の行程は昨日よりずっと楽なので、ゆっくり朝風呂ならぬ朝温泉から始めましょう。
3つある貸し切り温泉の最後「ひのき風呂」を堪能しておきたいですからね。
素泊まりプラン@7,400円、のはずですが釜めしのサービス付き。なんじゃそりゃ(笑)
温泉上がりに、サプライズ的な嬉しいモーニングをいただきます。
お釜の中は、地元産の食材がふんだんに使われています。
お茶碗2杯くらいのボリュームですが、あまりに美味しすぎて一瞬でペロリ。
ぶらり旅ひとり旅「草津温泉編」
食べてすくに走り出すのもなんなので、せっかくですから腹ごなしを兼ねて早朝の温泉街を散策。
夜とは違った爽やかな空気感も温泉街にとても似合います。
外湯の施設がちらほらあるのですが、おそらく無料の施設になっているんだと思います。
お宿の内湯、有料の外湯、無料の公衆浴場、草津温泉の懐はずいぶん深いのだなあ、と感心。
「歩み入る者に安らぎを・去り行く人にしあわせを」というキャッチが素晴らしすぎる。
うーん、西の有馬温泉、負けていないかい??
早朝の湯畑ですら爽やか。なんだかヨーロッパ的な雰囲気さえ漂っています。
ちなみに「日光+湯気」により、かなり蒸し暑いエリアになってました。日中だとさらに厳しそう…
有名な「湯もみ」の儀式が執り行われる「熱乃湯」さん。ここは見学も含めた有料施設。
見はしませんでしたが、一見の価値ありでしょうね。
温泉地にもしっかり神様が…と思ったら、お寺でした。朱色のイメージに騙された。(笑)
「草津山 光泉寺」さんの境内には「柏手(かしわで)をうたないでください。ここはお寺です。」の表記がきちんとあるのです。
温泉地といえば「温泉まんじゅう」
ルーツがどこかは存じ上げませんが、この色・この形は全国共通なのではないでしょうか。
朝も早くからまんじゅうを蒸して、通行人に配ってくれる親切なお店もあったり。ここでお土産を買いこめないところは自転車旅の数少ないデメリットの一つでもあります。
西の河原公園の入り口にあった気になる宿泊施設。
事前調べでは引っかからなかったのですが、どうやら自転車旅人のためのお宿の様子。
「pedalo」って「ペダル」ってことなのかしら。入り口の手すりにロードバイク型のオブジェがあるのできっとそうなんだろうと思う。
朝の散歩で訪れておおきたかったのがココ、「西の河原公園」(さいのかわらこうえん)
なんでも源泉が流れ出る川があるらしくて、ぜひ見ておきたかったのです。
実際に川の水に手を触れると…「あつっ!」っていうくらいの温度感。
これが川だけでなくて公園のいたるところから湧き出ているのがすごい。
冬だったらきっと公園中に湯気が立ち込める幻想的な光景が見られるんでしょうね。
そんなこんなで、結局小一時間は温泉地巡りを楽しんだ私。
ここだけ変に旅行感がありました。けれどメリハリもあっていいですよね。
2日目ライドのスタート
午前9時、いよいよお宿にお別れを告げて2日目ライドのスタートです。
2日目は、ここ草津温泉をスタートして「日本一標高の高いところを走る」国道292号線をただ走りぬくだけのシンプルな行程。
その道中に、目指す国道最高峰「渋峠」があるということです。
草津温泉が標高1,200m程度、ここから標高2,100mの渋峠まではひたすら登りですが、峠を越えると長野側まで、一切ペダルをまわさずに走りけれてしまうというメリハリ具合。
結果として【走行距離53㎞、獲得標高1,150m、実走行時間3時間10分】という行程になりました。
走り出してすぐ、目の前には草津温泉スキー場。温泉街からすぐ近くにこんなエリアがあるなんて。
規模こそ大きくはないですが。冬に来たらスキーも温泉も満足できるなんてすばらしい!
ということで、このスキー場のさらに上まで登らないといけません。ここを実質のスタート地点として、国道292号線をゆるゆる登っていきましょう
草津白根山を往く
「草津白根山」、事前調べではわかっていて少しドキドキしていたのですが、ここはれっきとした「活火山」です。
国道292号はこの草津白根山の山頂を越えて長野側まで続くルートなんですが、火山活動の様子によっては安全のため通行止め処置がとられたり、通行はできても一部の場所が立ち入り禁止になっていたりして、火山活動のご機嫌に左右される場所なんです。
幸いにして現在火山活動は穏やかで、ルートは開通していました。
登りの当初は森に囲まれた緩やかな登りなんですが、樹木が減って視界が広がってくると火山の表情が顔を出します。
そこに現れた「殺生ゲート」。なにやらものものしい名前ですね…
おそらく名前の通りなんでしょう。少し進むと理由がはっきりと書いてあります。
「硫化水素ガス発生地点につき、立ち止まらないでください。」
ここは温泉地であるとともに火山地帯。硫黄の香りは風情があって大好きなんですが、場所によっては有毒な火山ガスが噴き出てもいます。ここは気を付けて足を止めないように進んでいきましょう。
草木が生えない岩石地帯。おそらく注意書きの通りなんでしょう。
でもこれはこれで、地球の生命力を感じる素晴らしい景観でもありますね。
ゆるゆるとクライムを続けながらもシャッターが止まらない。それくらい山の表情が豊富!
見晴らしのいい小さな丘を見つけたので、一旦ここで小休止。
丘の上からは今まで登ってきた道と、これから進んでいく道の両方が見渡せます。
うーん、この立体感よ!
遠くには壁のように切り立つ崖。きっとあの先は火山地帯のはず。
この美しい道をずっと走ってきたのか…
主観と客観の両方を体験できるなんて他の場所ではなかなか体験できない気がします。
本当に美しく見通しのいい景色。宿泊した草津の街もかすんで見えるくらいには登ってきたということですね。
入ってはいけないレストハウス。
草津白根山のこの日の火山警戒レベルは「1」。国道を走り抜けるのはいいけれど、この場所にとどまるにはリスクがあるということで、レストハウスは閉鎖中。
この一帯にはマイクスピーカーが設置されており、注意喚起の放送が流れていました。
このエリアのあちこちに噴石からの「退避壕」が。
これを使うことはないままであってほしいですが、大自然の営みは予測不可能なので備えは必要。
…だけど、強度的にこの造りで大丈夫なのかしら…!?
ちなみに桜島で見た退避壕はもっとしっかりしてた記憶。まあ、あちらとは活動頻度が違う気がしますが。(笑)
あの岩山の向こうには「湯釜」と呼ばれるカルデラ湖(?)があると聞いていたのですが、残念ながらこの日は立ち入り禁止。
火山警戒レベルが「0」で全面解除の場合は、あの道を登りきると、直径300mもあるエメラルドグリーンの源泉が見られるらしいので、実に惜しい。
一方で、道路を挟んだ対面には火山地帯と打って変わって高山植物が生い茂る湿地帯が。
木道で観察ルートも整備されたエリアなんですが、一つの山の両面でこんなにも表情が違う光景が見られるなんて驚きです。
順調に高度を上げてきて空気も薄くなっているはずですが、なぜだかフィジカルは絶好調。息切れや高山病とは無縁の様子。すごいぞ自分!
気のせいか、空気が薄くなる以上に高度があがると重力が弱まるのか、むしろ体はどんどん軽くなっていく印象です。
気が付けばもうこんなに登ってきている。
おおおおーーーー!!
一つの峠を越えた瞬間、景色が変わった!!
尾根沿いに伸びる「天空の路」、視界の奥にまで続く道が空の果てまで導いてくれるような…
あまりにも素晴らしい眺望に、脚を止めて呆然と見惚れる私。
見晴らしのいい尾根沿いに静かに立っていた石碑には「中央分水嶺」の文字が。
なるほど、ここを境にして水は太平洋側か日本海側のどちらかへ流れていくのですね。
特段説明書きもなかったですが、地学的にはとても興味深い場所です。
ちょうどいいパーキングスペースがあったので、休憩にふらりと立ち寄ると手書きの看板が。
「標高2,119m、空気は外科医の75%」
なぞの説得力にあふれる看板ですが、だれが何のために書いて掲示しているのかはナゾ。
しかしここからの眺望は素晴らしい!
特に奥に見える火山地帯の様子は一見の価値あり。
緑の野原にあって、草木が生えないエリアからは煙が立ち上っています。おそらく水蒸気か火山ガス。こういう景色が見られるのも火山地帯ならではですね。
ゴォオーーーーール!!!
草津温泉から国道292号線を登ること約2時間。
ここまでの距離にして約30㎞をクライムして「国道最高地点 2,172m」地点に到達しました!!
標識以外特になにがあるわけでもないんですが、登りを走り切った充実感と、日本一の場所にいられる満足感とでテンションは最高です!
おもわず「うぉおおーーーー!!」と叫びたくなりますが、他の観光のみなさんに迷惑なのでぐっと我慢。(笑)
正直言うと景色の方は、無造作に立ててある手書き看板があった「2,119m地点」の方が見ごたえがあるので、景色に浸りたい人はそちらをお勧めします。
「渋峠ホテル」県境を越えて
国道日本最高地点をクリアして、そのまま訪れたかったのがここ「渋峠ホテル」
草津白根山と横手山の境目、まさに峠に立つ山小屋ホテルです。
この写真が撮りたかった!!
というくらいに、わかりやすい県境。
今までの旅では関門海峡トンネル内の「山口・福岡」の県境や、多々羅大橋の上の「愛媛・広島」の県境も渡ってきたのですが、山頂の国道最高地点でまたぐ「群馬・長野」の県境も新たな記録&記憶に加わりました。
うん。室内まで徹底している!(笑)
山小屋というのかホテルというのか、とにかく質素ですが親しみやすい昔ながらの…今風に言うとアンティーク風の…仕立ての食堂です。
草津温泉を出てから、すべての補給を使い切ったのでここでランチを含む休憩をしっかりととることにしましょう。
選ばれたのは「カツカレー」。山小屋といえばカレー。そう、ここは譲れない個人のこだわり。
うん、おいしい!!味もボリュームも完璧だ!!
食堂の受付では、このような証明書を100円で発行してくれます。
きちんと日付と時間を記載してくれる点が嬉しいですね。
渋峠ホテルの看板犬「マーカス君」
無類の犬好きの私は、彼と戯れることも実は旅の目的だったりする…(笑)
おー♪よしよしよしよし♪わしゃわしゃわしゃ…♪(約10分)
おなかも満たせて体力回復!マーカス君にはメンタルの補給もしてもらって、再出発!!
渋峠からは志賀高原を経由して長野まで、延々とダウンヒル。
ここからは横手山エリアとなって一面の高原エリアになります。
尾根に沿って、または蛇行する形で長野側に伸びる一本道はヨーロッパのロードレースで見る山岳コースの美しい風景にあまりにも似ている!!
下りながら幾度も絶景に感嘆詞が漏れ出てしまう私。
しかし、あまりのダウンヒルのスピード感に撮影のタイミングを逃しまくったのでした。
長野電鉄「信州中野駅」から、輪行で帰阪。
前述の通り、志賀高原からは延々とダウンヒル。距離にして約20㎞。
ほんとにペダルをまわした記憶がないくらい。逆を言うとこちらから登ることを考えたらゾッとしますね。
さて、この日の気温が35℃超ということで、JR長野駅まで都市部を走るのは気が引ける…
ということで、下りきったところにあった長野電鉄「信州中野駅」から輪行という選択をしました。
地方の路線を走る鉄道は、ご当地の特徴があって好き。
今回はこの風情あるステンレス車両に乗り込みます。
乗って知ったのですが長野電鉄では、JRや大手私鉄の車両を流用しているらしく、特急通過待ちの駅では旧型ロマンスカーや成田エクスプレスとすれ違ったりするのです。これは貴重な体験だ!
各駅停車の車両に揺られながら、車窓の景色を楽しみます。
少し早めのライド切り上げでしたが、これくらいのゆとりが旅の2日目にはふさわしい。
小一時間でJR長野駅に到着。
ここからは行きにも乗車した「特急しなの」で名古屋を目指します。
JRの中では旧型の部類に入る車両ですが、これも趣があって良い!
そうそう、特急しなのには輪行上の注意がありまして、おなじみの「車両最後列」の座席の後ろには輪行袋が入りません。
前後スイッチ型の座席でフットレストがついているので写真のとおり荷物をおく「幅」が足りないんですよ。
では、どうするのかというと、特急しなのには雪国長野を走る特性から車両の端にスキー板やスノーボードを積載する空間があるんです。
写真のこの場所がそうなんですが、ここに輪行袋(ただし縦型に限る)をギリギリ収納することができるのだ!という結構重要な豆知識。
長野電鉄からJRへの乗り継ぎがタイトだったので、お土産や食事をじっくり選ぶことは難しく。
とにかく自分にとって大事な「地ビール」と「おつまみ」だけは辛うじて入手!(笑)
車内でひとり打ち上げをしながら旅のふりかえり。
夕陽を見ながらビールを飲むという贅沢な時間を過ごしながら、大阪へ帰っていく私でした。
ツールド×夏休みのまとめ
長野発着で群馬の草津温泉、そして渋峠を目指した1泊2日の旅。
両日あわせると、総走行距離 約125㎞、総獲得標高 約3,000m、総走行時間 約6時間30分 という結果でした。
数字的には1日で走れてしまう距離なんですが、「真夏の猛暑」と戦っての結果です。文中のどこかに記しましたが、私の場合は気温や体温で大きくパフォーマンスが崩れるようです。
この点については自分の大きな学び&気づきにつながりました。夏になったらどこに行っても暑いということも合わせて。
では、旅のまとめです。
<良かった点>
□ 長野~群馬までの山越えルートの景色は飽きない。スキー場、キャベツ畑、峠ごえと様々な要素が楽しい!
□ 宿泊地に草津温泉を選んだのは正解。旅と旅行のメリハリが利いて充実感がアップ。
□ 草津白根山から渋峠を経由して志賀高原。このルートの美しいことこの上なし。
<悪かった点>
□ 真夏に暑さを想定した装備&ライドで挑んだが、結果的にハンガーノックの危機的状況も味わった。自らの甘さもあるが、もはや日本の夏は自転車旅に適していない。
□ マップの読み取りが甘かった。等高線などもライドのルート選考に加えるべき。今回は別ルートの方が安全・快適に走れたようにも思う。
<経費面(概算)>
□ 交通費(鉄道) @12,000×往復=24,000円
□ 宿泊費 @7,400×1泊=7,400円
□ 食費 朝昼@1,200+夜@3,600+昼@1,200+補給食@1,500=7,500円
□ 雑費 お土産等 5,000円
【合計 約44,000円】
…うーん、高いなあ。半分以上が交通費なのは、関西から信州へのアクセスの苦しいところ。
高地に涼を求めて旅立った夏でしたが、前回の大台ケ原同様に涼しさの恩恵は受けにくかった半面、素晴らしい景色と達成感を得ることができた旅でした。
早春や晩秋には、また違った景色が見られるルートでもあるので、機会が許せばまた訪れてみたいと強く思いましたとさ。
めでたし、めでたし。
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