<福井県 小浜市>エンゼルラインの頂上から、若狭の海を眺める【ツールド夏休み】

ツールド×旅Life

朝と夕方の空気がすこーし涼しくなってきた気がする。

思えば今年は夏が暑すぎて、夏らしいことをあまりやってこなかった…。

そう、夏といえば「海」。私に足りてなかったのはこれだ!!そうだ「海」を見に行こう!!

と思いたった9月のある日。

気づけば、@Rinko屋さんの超軽量輪行袋にバイクを詰めて、JR湖西線に乗っていた私。

目的地は日本海「若狭の海」、スタート地点は滋賀県の「近江今津駅」として夏の1DAYライドがスタートするのでした。

全行程はこんな感じ。

琵琶湖のほとりにある近江今津駅をスタートし、鯖街道を抜けて福井県の小浜市へ、そこから日本海側を西進して京都府舞鶴市をゴールに特急輪行で帰ってくる作戦です。

一番の目的は小浜市にある「エンゼルライン」。若狭湾には三方五湖を見下ろす有名な「レインボーライン」があるのですが、ここは自転車通行が禁止で年に1回「わかさセンチュリーライド」でだけ解放される場所となっています。同じように高台から若狭の海を見下ろすことができる「エンゼルライン」は無料の一般道。レインボーラインに勝るとも劣らない絶景とのことなので、期待が膨らみます。

滋賀県 近江今津駅からスタート

大阪からJR在来線で約90分。琵琶湖の西岸、ほぼ湖北とも言えなくもない場所ですが、意外と近いものですね。頑張って始発に乗らなくても早朝のうちからライドができるのは大きなメリット。

駅前でサクッと輪行を解除して、ライドモードに切り替えです。

駅前には昭和の香りが残るレストランもあって嬉しくなってしまいます。開いている時間であれば間違いなく入ってエビフライとクリームソーダを間違いなく注文していたはずだ。

早朝からゆっくりソロライドをスタートするつもりだったんですが、補給に立ち寄った駅前のコンビニには尋常じゃないくらいのロードバイクが…!?

今日は何かイベントでもあるのかな?と思って、来られた方に話を伺うと昨日から1泊2日でビワイチにチャレンジしているチームとのこと。

サイクルウェアには「TOKUSHIMA」と書いてあったのできっと四国から来られた方たちだったんでしょうね。琵琶湖もほぼ地元と感じてしまう身には「ビワイチたるもの1DAYで」と刷り込まれてしまっているので、宿泊旅の贅沢さをうらやましく感じたのでした。

近江今津駅から国道303号線に沿って走り出します。

目の前には壁のような山と尾根の向こうへ続く高圧電線の鉄塔が。こうやって見ると文明の力のすごさと怖さを感じてしまいます。

ここからは県境の山地を超えるルートになるので、それなりの坂を登るつもりでいたんですが実は拍子抜けするくらいに穏やかで走りやすい道でもありました

県境の宿場町 若狭熊川宿

整備されて走りやすい国道だなあ…と思っていたら、あっという間に「熊川宿」に到着していました。

いつの間にやら福井県。滋賀から福井ってこんなに近かったっけ?と思えるほどのスムーズさです。

熊川宿を通過するのは、通算4回目くらいでしょうか。

京都市街から「鯖街道」を抜けて日本海側に出るときには必ず通る場所になる、というのはさすが宿場町。古くから交通の要所になっていた理由がよくわかります。

ちなみに記憶の中では、いつもここで「熱中症でぶっ倒れる」というセオリーがあって無傷でたどり着いたのは今回が初めてのはず。個人的にはとてもうれしい。(笑)

全長約1㎞の街道の端には道の駅が整備されていて、車やバイクで来る方も多く日中には宿場町が観光客でにぎわうのですが、今は早朝。

人っ子一人いない静かな宿場町の空気感は格別です。タイムスリップしたかのような気もちになってしまう。

早朝の淡い陽ざしもあってか、独特の「むかし感」が出ていますね。

自転車旅では旧街道や宿場町、門前町に城下町など古くからの日本の交通の要所に出会うことが多くありますが、そのたびに遺伝子のどこかに残っているはるか昔の記憶が情緒となって甦る気がします。

言葉で言うと「なつかしさ」や「ノスタルジー」になるんだろうけど、確かに「見たことある、知ってる」と感じられるってことは本当に不思議。

田園地帯を抜けて 若狭湾へ

黄金の野原が前後左右に広がる美しい道。

峠を越えて平地に出ると一面に広がる田園風景。実った稲穂を見ると暦の上ではもう秋なんだなあと改めて感じます。

こういう景色が数キロにわたって続く。「あーーー!!きもちいいーーー!!!」と実際に叫びながらペダルをこぐ私。それくらいの解放感でした。

今回のこのルート、負荷的にも景色的にも大当たりかも知れません。

小さな峠のトンネルを抜けて、陽ざしのまぶしさに目を細め、明るさに慣れてきたと思ったら…

どーーん!!と飛び込んできたのがこの景色。

「海だーーー!!!」と、やはり叫ぶ私。

そう「海」が見たかったんですよ。これを見に来た!!

走り出して約30㎞で目標を達成したわけですが、ここからあと70㎞はずっと海を眺めながら走ることができる贅沢。

思えばこの夏は涼を求めて高地の山ばかり走っていたので、ここにきて海成分が心に染みます

海岸沿いから景色を眺めながら走っていると、眼下にきれいな棚田が見えます。

旅の最中に偶然出会う絶景というのもまた醍醐味の一つ。一期一会の景色も大切にしたい私はここで自転車を押して田畑の方へ下りてみることに…

うーん…素晴らしすぎる。

旅を終えてから調べてみたのですが「田鳥の棚田」と呼ばれる名所だったようですね。

いざ登坂!! エンゼルラインを往く

いやー、海だなぁ。

ほんとに海成分が枯渇していたんだ…と思うくらいに景色に浸る私。

遠くに見える筏の姿さえも愛おしい…。

犬熊のビーチは砂浜ではなくて玉砂利の浜。歩くたびにジャリジャリ音がするのはなんか好き。

大きな入り江になっているからか、風はあるのに波はすごく穏やかです。

さすがに海水浴シーズンも終わっているので水着ギャルはいませんでしたが、人がいない晩夏の海の景色も風情があってとても素敵でした。

ちなみにこの犬熊浜のエリアで何人かのローディーさんと一緒になって少しお話することもできました。

どうやら地元ライダーさんたちは小浜のラーメンを食べに行く「ラーメンライド」の様子。いいなあ羨ましい。

ちなみに私がエンゼルラインに向かっていることを伝えると「えー!?頑張ってください💦」と微妙なリアクション。え?結構大変な坂なのかしら???

ということで、3人組の地元ローディーさんと分岐で別れたところから、エンゼルラインのスタートです。

「エンゼルライン」とか「小浜エンゼルライン」と呼ばれるこの道は、2001年までは有料道路だったそうですが、その後無料化されて20年以上がたつ一般道です。

さすがに元有料道路なだけあって、頂上には展望台も整備されていますので、景色を見に訪れるバイカーやローディーも少なくありません。

頂上の展望台までは、全長約10㎞、平均斜度8%くらいの坂道を延々と登る必要があるので、それなりの走力を要求されますが、時折このような絶景ポイントがあるので、自然と脚をとめてシャッターを切るという小インターバルをはさむことになるので、意外と疲れません。

この日も暑い一日だったんですが、標高が上がるにつれて風が涼しくなってきます。

日陰での小休憩をはさみながら、眼下の絶景を眺める。苦しいなかに少しずつご褒美が散らしてある、まさに「アメとムチ」のヒルクライムといいますか。

「大神岩」と書いて「おおかみいし」と読む。すべて逆張りの神聖な場所。(笑)

見た感じ「狼」に似ているから、とも書かれていますがどの角度から見てもオオカミには見えないのはご愛敬。名所や史跡の見た目からくる「云われ」ほどあてにならないものはない…。

ここから頂上まではあと1㎞くらいのはず。休憩をはさんでラストスパートといきましょう!

どーーーーん!!!

「おおおーーーーー!!!」

エンゼルライン展望台からの、まさにパノラマビュー!

霞がかっていることもあり、海と空の境界線がわからないほど、一面がブルー。

自分のバイクの色も空色なので、まさに背景に溶け込むかのよう。

私がソロライド派なのを神様が知っているのかもですが、いつも名所に来るときは本当に「独りぼっち」なんです。つまり景色を独り占めできるということ。

なぜかこのタイミングに限って、バイカーもローディーもいないという贅沢空間。

展望台はかなり大きな駐車場スペースになっていて、本当に若狭の海が360度見渡せます

標高は600mほどですが、眼下には小浜の市街地、入り組んだ入り江の風景、そして山から立ち上る霞と、いろんな表情が堪能できるのです。

こんなに天気がいいのにここまで来る人がいないなんて、なんて勿体ない…。

そうそう、エンゼルラインを目指す方に大切な情報をひとつだけ。

「展望台には、自販機もトイレもありません!!!」

これ結構大事。私はダブルボトル体制でのぞんだのでセーフでしたが、ふもとで補給を行っておかないと、特に夏場は危険ですよー。

小浜市街地で遅めの昼食を

エンゼルラインを一気に下り…と行きたいところですが、登りの時点で分かっていたことで

「落石多し、スピード注意!」です。

平均8%の下り坂は速度が乗りやすいのですが、下りのラインは山の斜面側にあるため大小さまざまな石や砂利が散らばっていますので、打ちどころ(?)が悪いと落車の危険性が高いのでこちらもご注意を。

エンゼルラインを下りきった時点で13時前、そろそろお昼を食べたくなってきた。

小浜湾沿いのお店で海鮮でも…と思ったら、食事は出していないみたい。でも新鮮な海産物を見るのは目の保養になります。

なぜかいつも寄ってしまう「小浜フィッシャーマンズワーフ」の海鮮は、日曜日ともあってほぼ売り切れ。想定していたけどね。

なので、ここは前回の小浜ライドでもお世話になったお食事処「ミスティ」さんを頼りましょう。

店内には観光客より地元漁港の皆さんの方が多くいらっしゃいます。私にはこのほうが居心地がいい。

漁港の定食屋さんで海鮮というよりは焼き魚や煮魚、フライなどのメニューが豊富なんですが、せっかくの福井県なので、今回もおなじみの「ソースカツ丼」をいただきましょう!

いわゆるトンカツ肉ではなく、生姜焼き用くらいの薄厚切りの豚肉を一口大に揚げているので食べやすい!お店によって違うというソースの味もまた絶品。「うん、こういうのでいいんだよ!」という納得の味なのでした。

ミスティのご主人と奥様2人(?)とお話ししていると、どうやら港で「よさこい祭り」をしているみたい。「ぜひ見ていったらいいよ。」と言われたら寄らずにいられません。

しかし現場は人でごった返していて、遠くから眺めるにとどまった旅人なのでした。

小浜西組の伝統的建造物群

小浜といえば、このマーメード像。通算2回目前回来た時は夕暮れ時だったはず。

マーメイド≒人魚については美しくも悲しい物語がつきもので、ここ小浜の人魚にも「八百比丘尼(はっぴゃくびくに)」という、人魚の肉を食べてしまったがゆえに、八百年も生きながらえざるを得なかった尼僧の言い伝えがあるのです。

で、前回は日が暮れて立ち寄ることができなかったスポットがここ。

「小浜西組伝統的建造物群」エリアです。

ここは、かつての小浜城下町として、そして小浜の港町・寺町として栄えた独特の街並みです。

今でこそ旧家屋を利用した様々なお店が並んでいますが、細い街路に所狭しと間口が並ぶ様は一見の価値あり。間口が小さく細長い家屋のつくりは「うなぎの寝床」などと呼ばれているそうです

やはり古くから栄えていた街にはそこの風土に合わせた独特の街並みが存在しているのですね。

高浜から舞鶴を駆け抜けて

小浜市から日本海沿いに西進して舞鶴から輪行で帰るため、本日の仕上げのラストスパートです。

ルート上経由するのが、福井県の高浜町。関西在住者にとっては電気の産地としてあまりにも有名。

国道沿いには「原電」(こちらでは原発とは言わない様子)の発電量が示されています。

236万kw…私のFTPが200wとして、一千万倍か…想像ができない。

電気インフラをささえる関電さんの力もあってか、高浜のルートは整備が行き届いている!!

道中ずーっと気になっていたのがこの山。山頂に霞がかかった神々しい姿に惹かれます。

あとで調べたら「青葉山」とのこと。自転車では登れないようですが、きっとあそこから見下ろす景色も絶景なんだろうな。

道中、グラベルロードのサイクリストと並走してお話ししたところ、この日は宮津まで行かれるとのこと。翌日が仕事じゃなければ私も「天の橋立」まで行きたかったところですが「私は東舞鶴でさきに失礼しまーす。」といってお別れしました。

いうてる間に、あっという間に舞鶴です。今日の行程から考えると駅前通りの風景はとても新鮮。

16時にJR東舞鶴駅に到着。おおむね予定どおりの行程でした。

こんな軽装備で輪行できるのは、前出の「超軽量輪行袋」のおかげです。これはいいものだ…!

特急まいづるにて東舞鶴から京都まで。京都から在来線で大阪。占めて約2時間30分の電車旅。

お決まりの「ひとり車内打ち上げ」を堪能しつつ帰路につきましたとさ。

旅のまとめ

「海が見たい」という衝動から朝イチに電車に飛び乗ったわけですが、10時から16時までのライドで滋賀~福井~京都の3府県をまたぐことができています。

結果として総距離98㎞、獲得標高1,100m、総走行時間5時間14分、という結果。

エンゼルラインの登り以外はいたって走りやすいルートなので、エンゼルラインを外せば一気に宮津まで容易に走り抜けられるルートだと思います。

【旅のまとめ】
□ 9月とはいえ日中はまだまだ暑い!ダブルボトルと氷システムはまだ必須
□ エンゼルラインはそこそこの激坂。景色のいいところで小休止するのがポイント
□ エンゼルライン登坂の前には完全補給を!あと下りは落石に要注意!(前述)
□ 滋賀~舞鶴の国道沿いは非常に走りやすいルート。海岸沿いのルートは気持ちいい!

【概算経費】
□ 交通費 往路@1,500、復路@4,700
□ 食費  昼食@900
□ 雑費  補給等@2,000
■ 合計  約9,100円

往復ともに輪行の場合は、やっぱり交通費が高くつきますね。それでも思い出はプライスレスだから仕方がないけれど。

無事に「海」を堪能できたことですし、今回もとてもいい旅となりました。

めでたし、めでたし。

コメント