<宮崎県 都井岬>登れる灯台と御崎馬を求めて弾丸ライド【ツールド秋休み】

ツールド×旅Life

10月のとある週末に思い切って連休を取得してみました。

思い切ったのは「西日本の全府県制覇」のために最後のコマを埋めたかったから。

その最後のピースが九州の「宮崎県」なのですが、鉄道では若干行きにくいところなのでフェリー利用が前提。となると夜行便の船中1泊が往復ともに必要なので、連休が必要になるんですね。

利用するのは神戸港から出発する「宮崎カーフェリー」…と思いきや、な、なんと「ドック入りにつき運休中」だってー!

実は予定した1日目の予報が雨だったので、やむなく行程を1日削って「現地日帰りの弾丸ライド」に切り替えたのですが、たまたまその日が運休だった。というお話。

目的を達成するためには…鹿児島から宮崎に行くしかない!!

という結論になったのでした。

というわけで、さんふらわあ さつま

そんなこんなで、当初の予定を修正して大阪南港を出発するフェリー「さんふらわあ さつま」の乗船ターミナルに立つ私。

あ、日付がバレてる…(笑)

さすがに顔出しパネルに顔をはめるのは大人げないと思い、輪行袋のバイクに入っていただきましょう。

鹿児島航路を利用するのは数年ぶり2回目のことなんですが、今回は行き返りの船中泊のみで現地日帰りライドという弾丸ツアーです。

そのため、格安ツアー作戦として超久しぶりの「ツーリストルーム」を利用。往復で17,000円というのは破格!

ちなみに本船は2018年に新造されているので、ツーリストとはいえセキュリティやプライバシーは現代風で安心できます。

カーテンを引いたら半個室状態になるのはうれしいところ。

往路はこの部屋に3人だけだったので、快適な環境でした。

ありがたいのがこの大型荷物ラック。

輪行用自転車の積載を想定して、船内のいくつもの個所に設置されています。

とてもサイクリストフレンドリーな設備となっていますね。

それでは、恒例の船内探検です。

太平洋航路の船は、とにかくデカい!!

さすが新造船、ロビーの吹き抜け天井はこの通りの美しさ。しかも天井には映像投影の仕掛けもあって豪華なことこの上なし。

金曜・土曜の出発便では、食後から消灯の間の時間でプチコンサートやプロジェクションマッピングなどのエンターテイメントもあって乗客を楽しませてくれます。

この日の夕食はレストランのカレーをテイクアウト。750円なり。

夕食ビュッフェが1,800円で楽しめるんですが、明日の晩も同じ船なので初日はこれでガマン。

フリースペースでゆっくり夕食を楽しんだあとは、大浴場で疲れを癒しましょう。(疲れてないけど)

大海原で水平線から昇る朝陽を眺める。というのもフェリー輪行の醍醐味のひとつ。

何度旅しても必ず早起きしてみてしまう。

海面に深いオレンジ色の道が生まれるシーンがとても好きなんですよね。

朝一番から潮風を浴びる贅沢。

そして、塩で湿った体を朝風呂でさっぱり洗い落とすのもまた贅沢。

船旅には朝風呂も欠かせません。

大阪から夜を越えて15時間の船旅。

見えているのが宮崎県の「都井岬(といみさき)」であるということを船内アナウンスが教えてくれます。

そう、私の今回の旅の目的地は、あそこに見えている白い灯台「都井岬灯台」なのです。

まってろよ!都井岬!!

鹿児島~宮崎ライドのスタート!

8時55分、鹿児島県の志布志港に入港。ここからライドがスタートします。

ほとんどの乗客は降船後にフェリーターミナルからシャトルバスに乗り換えて鹿児島市内に向かわれるようですが、私はここで輪行を解除して宮崎方面を目指すのです。

自転車持ち込みは私ともうお一方。ターミナルの外で輪行解除をしながら軽く会話を交わします。

なんでもフォールディングバイクで桜島を目指すとのこと。私も過去に走ったルートですがミニベロとなるとさらに負荷が増しそうなので頑張ってください!

などと話している先からバイクが汚れていく…!?

砂??、いや、「これ、火山灰ですよね!」とユニゾンする私たち。(笑)

桜島ってだいぶん遠いのに、志布志にまで降るんだ…。というか鹿児島方面、改めて頑張ってくださいね!

ということで、それぞれの旅がスタートしたのでした。

今回の旅の概要がコチラ。

冒頭に述べた通り、目的地は宮崎県、スタート&ゴールが志布志港という行程で、本当に行った道を戻ってくるだけという弾丸…いや、ブーメランライドです。

鹿児島便のフェリーの特徴は、大阪から距離があるので「出航時間が早く、到着時間が遅い」ということ。この日は17時に大阪便が出航するので、早めに戻らないといけないのです。

寄り道や食事も当然はさむので、意外と時間に余裕がない日帰りライドとなったのでした。

気づいたら、宮崎県

10月だけど九州南端だけにそれなりの暑さ。ウェアは夏用で正解でした。

志布志から湾岸沿いを走りながら、時折ヤシの木っぽい街路樹の並木を通り抜けることもあり「うーんん、南国感がいいなあ」なんて思っていたら、知らないうちに県境を越えていたようです。

今日はこの「串間市」を端から端まで走る形になるわけですね。

道の駅くしまで最初の休憩をはさんだところ、気になる案内表示が。

「オートバイ神社はこちら」

おそるおそる近づいてみると、とても小さな神社?が。そして「全国オートバイ神社第23号認定」というさらに謎の案内板。

オートバイには疎いのでよくわかりませんが、バイカーの聖地なんでしょうね。

目的地は「都井岬」。道路標識に従って国道448号線を往きます。

時間制限があるのでいつも以上に気持ちが急いてしまうのは仕方がない。

きれいな黄色の花が咲いていたので、写真を撮ろうと近寄ってみたら、まさかの彼岸花。(たぶん)

地元では赤い彼岸花ばかりですが、南国では色も違うのかな。この鮮やかさには驚かされます。

ひょっとしたら、鬼滅の刃で言ってた「青い彼岸花」もどこかにあるのかも!?

山間の何気ない小川に掲げられた標識。

よく見ると「土石流」ってさりげなく書いてあってびっくり。

有事の際は気を付けないといけない場所なのかもしれませんね。

岬を目指すからには、細かい峠のアップダウンはつきものと考えておかないといけません。

海岸沿いって地図ではフラットに見えるんですが、等高線で表示されないアップダウンが脚を削りに来ます。

でも、海が近いだけに景色はいいんですよね。個人的には風力発電の風車は大好物。

…また登らすんかい。

という、突っ込みの独り言が絶えません。

これも自転車旅あるある。

都井岬に到着、御崎馬と灯台に癒される

いよいよ都井岬です。

といってもここは国定公園の入り口。わかりやすいゲートが目印になっています。

車とバイクは「野生馬保護協力金」として表示の値段を通行料代わりに支払って入ることになりますが、ありがたいことに自転車は無料です。

「駒止の門」とあるとおり、ここから先の国定公園エリアには、古来の野生馬「御崎馬(岬馬)」が自由に暮らしているのです。

今回は動画を先出しで。

うん、行って良かった!都井岬!!

見晴らしのいい岬の広場。

夕方には夕陽がキレイなんだろうなぁ。と想像するけど夕方までいるわけにいかない場所。

そして写真は突風にあおられて、バイク吹き飛ぶの図。(笑)

いいカットが撮れた!!

これが「御崎馬」です。本当に自由気ままに過ごしていて、岬のあちこちで見かけます。

人なれしていて…むしろ人には興味がないのか?というくらい、悠々と闊歩しています。

「牧場の馬と比べれば寿命は短くなり、死亡率も高いのですが、好きなものを食べ、好きな相手と結婚し、自由に暮らす姿は生き物本来の気高さを感じます。」

この案内文に心を打たれました。野生ってそういうことですよね。

しかし、こういう文章が書けるセンスが欲しい…。

気高い野生馬たち。

サラブレッドのような競技的な美しさではなく、野太い頑健な古来の馬の姿をしています。

常に複数の群れでいるのはきっと家族なのかな。

広場をあとに岬を登っていくと、丘の頂上に白い建造物が見えてきました。

あれが目的地である「都井岬灯台」です。

最後のひと登り、がんばれ自分!

こだわってこの灯台を目指してきたのは、ここが「日本の登れる灯台16基」のひとつだから。

初めて知ったのは山口県を走った時に立ち寄った「角島灯台」。それまで灯台に登るなんて考えたこともなかったけれど、岬からはるか遠くを見渡せるという稀有なロケーションの虜になってしまいました。

そこから、出雲日御碕灯台大王崎灯台安乗崎灯台潮岬灯台と訪れ、今回の都井岬灯台で6基目となるのです。

バイクと灯台、うーん最高だ!

ちなみに都井岬灯台はふもとの広場まで自転車で入れました。ここに留め置きできるのは安心。

この堂々たる存在感よ。

灯台ってなんで惹かれるんだろう。といっても私だけでしょうかね?

都井岬灯台は今まで見てきた灯台の中では小さな部類。

イメージ的には2階建て、というような感じ。

それは見晴らしのいい高台の頂上にあるからで、これ以上高さを出す必要がないからなんでしょう。

コンパクトだけど横方向に広くて、これもまた特徴ある灯台の一つです。

個人的にはレンズが間近に見えるのがポイント高し!!

宮崎側の海岸線。

海と空と緑のコントラストが美しく、入り江の風景にはなんとなくですが南国を感じさせるものがありますね。

ふもとの休憩所で「とび天」をお買い上げ。こういうご当地メニューは外せないですね。

売店のおばちゃんに「自転車でようきたね」ってほめてもらいました。

御崎神社と民宿 海洋荘

灯台見学を終え、折り返し復路を走ろうと思ったところに、下りへの分岐点。

案内板には「御崎神社」とあります。

ここまでさんざんアップダウンをこなしてきて脚にきているところに急斜面…

すこし考えたけれど、旅の機会なんて一度しかないわけなのでここは行っておこう!!

と、下っているときにも御崎馬の家族とすれ違います。この雰囲気、なんかいいなあ。

海に向かう大鳥居とソテツに囲まれた階段。

南国チックなしつらえの神社に期待感が高まります。

ここからはバイクを担いで降りていくことに。

200mほどの階段を降り切ると、海岸に到着。

神社はどれなんだろうと見渡すと、崖の上に赤鳥居が!?

あんなところに神社があるなんて驚きです。

当然あそこまではいけないので、ここから見上げる形でお参りをするわけですね。

今までも書いてきましたが、旅の最中は予定にない出会いがたくさんあって。それは人だったり場所だったり風景だったりするんですが、自動車ではなく「自転車」でめぐるということで自由度は飛躍的に増すし出会いの機会も大きく広がるんだなあと感じます。

特に自転車は自らの意思と体をもって進む乗り物だから、意図してその出会いを見つけたという事実と納得感がすごい。

この「御崎神社」との出会いも、「あの坂を下ったら…また登ることになるけれど…でも、行こう」という動機が働いて得られたもの。

旅の中で「ハッとしたら、動く」ということが、新たな出会いや発見につながるんです。

迫力の岸壁と海の青。やっぱり海はいいなあ!

と浸っていたら、おなかがグーっとなってきました。

折り返し点ですから、ここで昼食をとるのがベストですね。

これといって食事について計画していなかったので、見つけた看板には素直に引き寄せられましょう。

ということで、看板にしたがって進んできたところが「民宿 海洋荘」さん。

食事休憩もOKな岬の民宿食堂です。

浸っちゃえるくらいの昭和感。この安心感はなんだ…(誉め言葉)

まさに「食堂オブ食堂」とも言えるこのロケーションに、改めて「来てよかった感」が高まります。

注文したのは食堂自慢の「なんでんかんでん丼」

漁師もされている民宿のご主人が自ら水揚げしたその日の材料で作ってくれる海鮮丼。

丼はもちろん、あら汁の美味しいこと!

岬の高台から海を見下ろすカフェ「PAKARAPAKA(パカラパカ)」という施設に休憩に立ち寄ったら、ポケふたのレプリカがあったので、ひょっとしたらと思って広場を眺めると…ありました、本物。

特に意識して旅をしてるわけではないんですが、ところどころで思い出したりであったりする「ポケふた」。ちょっとしたラッキーでした。

ちなみにポケモン世代ではないので、コンプリートとか目指してません(笑)

では、ここから復路スタート。

都井岬を堪能しすぎたので、時計を見ると結構ギリギリな感じですね。

来た道を帰るだけという面白味のないルートですが、景色の見え方が違うのは楽しいところ。

さらば宮崎、ただいま志布志

来た道を戻るだけなのに、スピードが出ない…!?

というのは、完全な向かい風のせい。

海岸沿いでは遮蔽物がないので、風を受け続けないといけないのがつらいところ。

時間がないおかげで、ほんとにどこにも立ち寄らず県境をあっけなく越えてしまった…さらば宮崎!

フェリーターミナルに戻る前に、立ち寄ったのが「志布志駅」

JR日南線の終点駅なので、その雰囲気と車両をぜひ見ておきたかったのです。

単線一両編成の気動車。少し錆の浮いた白い車体がかっこいい!!

元の計画では現地1泊旅で、途中輪行をはさむ予定だったので、乗れなかったことが悔やまれます。

志布志市志布志町志布志の志布志駅というゲシュタルト崩壊を起こしそうな地名は自慢でもある様子。

くたびれた名所案内の看板もきになるところ。

16時30分志布志港に帰着、17時出航の便なのでギリギリセーフ!

さんふらわあ さつま。今朝まで乗ってた船ですね。おんなじ船に乗って帰るというところが感慨深い日帰りライド。

ちなみに火山灰はすでにやんでいました。風向きが変わったからかな。

乗船すると、ほどなくして出航。

うっすら夕暮れじみてきた空気感、港のクレーンも逆光をうけると大きな生き物に見えますね。

朝には日の出を拝み、夕方に日没を見送る。

これも船旅の贅沢のひとつ。

大阪の街では決して見ることができない風景です。

こういった地球の自然現象をダイレクトに感じられることも自転車旅の魅力の一つ。

個人的にはドアtoドアの旅行より、感じることや得られるものがずっと多くて、旅の出来事すべてが自分の糧になってくれているように思っています。だから自転車旅がやめられない。

夕暮れに影を映す都井岬。

今日走ったところを俯瞰して眺めるのは不思議な気分。でもこうやって見るのも心地いい。

予定していた行程と違っていたけれど、今回も今回だけの良い旅ができました。

旅のまとめ

ということで、船中2泊、現地日帰りの弾丸ツアーを強行してきたのでした。

走行距離81㎞、総走行時間4時間10分、獲得標高1,200mと、数字だけでみると「半日」くらいの行程なんですよね。

文中で少しふれましたが、鹿児島航路では船の発着時間に縛られるので、今回のような日帰り弾丸ツアーは時間的にもコスト的にも決して条件は良くありません。なので、実はおすすめしないプランです。

しいて言うなら金額だけで言うと鹿児島便の往復(船中2泊)が17,000円で済んだのは比較的安上がりではありました。

ちなみに当初プランでは…
・神戸から「宮崎カーフェリー」で宮崎へ
・宮崎市街から海岸沿いに南下
・日南あたりで一泊
・2日目に都井岬を経由して志布志へ
・志布志から「さんふらわあ」で帰阪

としていました。
ただ初日が雨予報だったので、宮崎~志布志の弾丸ライドに変更したのですが、この時に限って宮崎航路が運休、仕方なく志布志発着という選択となった、ということです。

しかし、それでもこの旅で「自転車旅による、西日本全府県制覇」ができたことは、一つの大きな成果なのです。

全都道府県を自転車でめぐるという目標にむけて、今後は東を目指して頑張っていきたいと思います。

めでたし、めでたし。

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