【自転車旅】山口県ライド 2日目/自然の神秘、カルストの「秋吉台」を走る!<萩・秋吉台・秋芳洞・下関・門司港レトロ>

ツールド×旅Life
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プロローグ~2日目のスタート~

カーテンの隙間から差し込む光で目が覚めた。古き良き旅館の和室で迎える朝は最高なんですが、この記事では深掘りせずに別記事で「宿」だけをクローズアップする予定。それだけ個人的には貴重なお宿でした。

ということで、まぶしくも爽やかな朝の光を受けながら【ツールド秋休み 山口編】2日目のスタートです!

2日目の行程はこんな感じで【萩】から【下関】まで山口県を縦断。小学生のころ社会の授業で知り、いつか訪れたい場所の一つとして心に決めていた【秋吉台&秋芳洞】に立ち寄るのが一番の目的。

立ち寄りに時間を割きたいので、距離は100km程度を目標に。山口県の政治・文化の歴史と大自然の歴史を満喫する2日目となりました。

歴史を生んだ町【萩】を巡る

朝8時に宿を出発。いつもの旅より朝が遅いのは、宿泊した【芳和荘】さんの独自取材を小一時間ほどしていたから。朝食も食べずに撮影に夢中になれるくらいのいいお宿だったんですよ。

昨晩遅くに【萩市】に到着していたので、2日目は萩の町巡りからスタートです。「山口」「萩」で検索すると出るわ出るわの情報量。日本海に面したこの町は、明治維新の折に多くの志士が歴史を刻んだ場所でもあります。相変わらず日本史に疎いので、ぴんと来ないことも多いのですが、街並み全体から感じる空気感はきっと確かなもの。

城の形はすでにない【萩城跡】は、珍しく「自転車乗り入れできます」の表示あり。サイクリストフレンドリーですね。

城下町の朝はとても静か。電線と舗装が「現代」であることを知らせてくれます。昔ながらの日本家屋と景観を妨げるような高い建物がないことで、当時の風情をそのままに感じられました。

小さな裏路地に至っては、武士や町人が歩いていても不思議じゃない雰囲気。ここには伊藤博文や高杉晋作の生家、吉田松陰の塾もあって時はまさに「幕末」という感じです。

泊まった宿も街並みも歴史を感じる古いもの。しかも京都や奈良よりもずっとリアリティにとんでいて、現代にいたっても歴史密度がこれだけ濃いというのは、ここがきっと「日本海側」だから。邪推ですが、中央政府から見たときに、山口県の・さらに日本海側というのは近代化においても投資や再整備が行き届きにくいという面があったのではないでしょうか。

だからこそ、私のような自転車旅人にとっては貴重な場所なんですが。

さんざん歴史だ文化だと言っておきながら、朝食は朝マック(笑)。朝早く、まだ町が目覚めていなかったのでこればかりは仕方がない。現代のお世話になることにしましょう。

午前9時30分。萩市を出る前に立ち寄ったのは【藍場川】、江戸時代に造られた人口の水路です。ここは昨晩のお宿で行程を練っているときに偶然見つけたところ。

今では鯉が泳ぐ水路ですが、昔ながらの洗い場の跡や民家へ石橋、場所によっては川船が通れるような場所があったりと、ここでも萩の民衆が水利とともに生活していた姿をそのまま見て感じることができました。

これまでの旅でもその都度感じてきたことですが、「日本史に疎い」というのがとても残念なことだと一番実感したのはこの【萩】でした。今風の言葉でいうなら「聖地巡礼」にあたるのでしょうが、歴史背景を知ったうえで、あえて見て感じて確認していくという行為も旅の楽しみ方の一つだと思います。

そんなことを考えながら、歴史が詰まった萩に別れを告げます。

日本最大のカルスト【秋吉台】を往く!

ずっと海辺を走ってきましたが、ここからは山間部を抜けていきましょう。目指すは日本最大のカルスト台地である【秋吉台】です

幸いにして岡山~広島あたりに連なる「中国山地」からは外れているので、標高・斜度ともそれほどキツくないルート。おだやかな坂道と農村の景色を楽しみながらマイペース走法で向かいます。

萩方面からやってきて、最初に出会うのがこの【大正洞】。秋吉台の北端にある鍾乳洞です。入り口には道の駅チックな休憩所が併設されていてバイカー達が集っています。

ここで小休憩をしながら、この大正洞に入るべきか悩む私。自転車旅では一期一会の景色との出会いと旅の有効時間のバランスがとても大切…なので、ここは入場を見合わせ。この先にある日本最大の鍾乳洞で必ず予想より長く滞在しちゃうはず。と自分の行動傾向を分析したのでした。

大正洞からは【秋吉台】へ続く【カルストロード】を走ります。多くのバイクに追い抜かれることで、目的地が近いことを実感します。

びっくりするほど景色が変わることに戸惑う旅人。…さっきまで周りは普通の森林だったのに。

これは乗鞍で見た「森林限界」の景色に似ているようにも感じます。なにせ言葉通り森が【台地】になっちゃった。そして、地面から突き出る石灰岩の塊、かたまり、カタマリ…。うん、森を抜けたら完全に異世界。地質学を少しでもかじっていたらこの仕組みも理解できたんでしょうが、学のない私には見たままを理解するしかありませんでした。それにしても美しい…。

当然ながら「ジオパーク」に認定されています。この秋吉台のいいところは、萩にも似ていて無駄な設備や建物が一切ない。ということ。観光地としてはビジネス的にどうかとも思いますが、やはり「ありのまま」で感じられることが旅人にはとてもありがたいのです。こういう場所は、視覚だけでなく、嗅覚・聴覚・触覚などをすべて使って感じたい。だから旅は自動車よりバイク、バイクより自転車でありたいなあ、と思う私でした。

その昔、windowsの壁紙がこんな感じだった。あれは秋吉台の風景だったのだろうか…というくらい抜けの良い丘の風景。ガードレールがなければ100点満点です。

本当に広々としたカルストの台地。約13kmにわたって続くこの【カルストロード】は自転車旅人にぜひ走ってもらいたい最高の道の一つでした。

美しき鍾乳洞【秋芳洞】は地球の神秘

小学校の授業と教科書の写真で知り、日本にそんな場所が本当にあるのか…と四十数年を生きてきた私が、今、その真実を初めて確認することができるのです…

ジャジャーーーン!!【秋芳洞】だーーー!!

ということで、やってきました日本最大の鍾乳洞【秋吉洞】。この看板を見てテンションが上がりまくりです。自転車に乗ってなかったら、きっと訪れることはなかったかも…とか思うと感慨深いものがあります。ロードバイクよありがとう。

お土産屋さんが連なる参道のような小道を抜けたら【秋芳洞】の入り口。入洞料1,200円を支払ったらこの景色が出迎えてくれます。この岩の裂け目に続く歩道が、大自然に介入する人間の業のように感じられ…とにかく入り口からすごい迫力。

ちなみに自転車は参道には入れないので、だいぶ手前の車道沿いに止めることになります。この旅時点では少なくとも駐輪場はなく、観光案内所の入り口に止め置かせてもらいました。

秋吉台の地下100mに位置する洞窟…本当にあったんだ…という感動。カルスト台地を抜けた雨水が鍾乳石を溶かし、最下部では地下水脈となって流れる。萩の歴史などをはるかに超えたスケールの地球の歴史だ。

いや、写真で見たことはあるけれど、ほんまにあったんかーい!。と言いたくなる実体験。通称【百枚皿】。

見上げるだけでもこんな感じ。なんかすごすぎて人間のちっぽけさを感じてしまいます。私が生きている期間では鍾乳石の形はちっとも変わらないんでしょうね。何万年、何十万年、という話ですよ。

そして、なんと洞口半ばには【冒険コース(300円)】というオプションコースが。これは行かざるをえませんね。最下層を走る園路ではなく、鎖を伝い未整地の高所を渡り歩くコース。これすごく楽しいのでお勧めですよ。(ちなみにサイクルジャージで壁を伝う姿が忍者に見えて、下から見上げる観光客が少し沸いたのは内緒)

【秋芳洞】は全長約1,000m。結局90分も滞在してしまいました。大正洞に寄らなかったのは正解。あと大切な情報ですが、洞内は「飲食禁止&トイレなし」なので、ライドの途中で寄られる方は休憩&補給を済ませてから入洞してくださいね。

正午に入洞して13時30分に退洞(?)。すっかりお腹が減ったのでお食事タイム。いただいたのは【ぜんじかっぱそば】なる伝統食(らしい)。山口では【瓦そば】も有名ですが、また違うもの。これは「わさびそばを>鉄板で焼いて>タレで食べる」という三段落ちのような面白ご当地メニューでした。

関門海峡、再び。【下関】よさらば!

山口県の真ん中はほとんどカルスト台地と鍾乳洞だ!…と間違った学習をして、南岸へ出ます。同じ海でも萩のある日本海側と下関のある瀬戸内海側では景色が全く違う。こちらは現代文明と工業の町であることを痛く感じます。

湾岸のコンビナート。日本海側では全く目にしなかったのは、やはり港と物流といった瀬戸内の特性からの必然なんでしょう。なるべくしてなった姿、といいますか。

大きな「SHIMANO」の看板に引き寄せられて【シマノ下関工場】の入り口についちゃいました。完全に予定外のコース。なせでしょうか、里帰りしたかのような嬉しさが込み上げてきます(笑)。

日本海側に比べて、ずいぶんゴミゴミした印象の現代の街を進んでいると、いやおうなしにゴールが近づいていることを実感してしまいます。

増えてきた信号に頻繁に脚を止められつつ、いよいよ下関は【関門海峡】に戻ってきました。「長州砲」が指すのは海峡の向こう側。この海峡を越えると旅のゴールとなります。

行きと同じ【関門トンネル人道】をくぐってゴーーール!!!

薄暗くて景観も何もないまっすぐな一本道の先に「関門突破」のゲートがありました。なにやらシュールですがれっきとした事実。17時、この関門突破をもって、山口旅をクリアです!

海の玄関【門司港レトロ】でノスタルジー。

ここからはボーナスステージといったところ。帰りの船の時間まで余裕があるので、港を目指す前に行きに下見をした【門司港レトロ】を散策です。

赤レンガ造りの明治・大正レトロの街並みに、暮れかけてきた太陽の光がいい雰囲気を添えてくれます。ここもザ・観光地なんですが、月曜の夕方で人が少ないのがうれしいところ。しっかりこの空気に浸ることができました。

門司港といえば【焼きカレー】。おしゃれなシーサイドのお店で夕陽を見ながらプチディナー。そういえばこの旅ではご当地メニューにかなり恵まれていますね。

レストランのカウンター越しに夕陽を眺めながら、ゆったりとした時間を過ごします。山口編がいったん完結しているので、謎の余裕と普段とは違う落ち着き。この感覚、大事にしよう。

【名門大洋フェリー】で帰阪

門司港から新門司港までは30分もかからず18時には余裕の到着。かつてこんなに余裕をもってフェリーに乗ったことはない(笑)。

そうそう、改めて時は2018年秋ですね。平日便なので乗客もまばら。いいのか悪いのか、私的にはゆっくりできて居心地がいいのです。

船内は行きの便と変わらず。唯一、端っこのベッドが確保できなかったので2階ベッドに。この場合、自転車の置き場に困ります。この日は人が少なかったのが幸いして、空きスペースに置くことができましたが、名門大洋フェリーでは置き場確保が難しいので、部屋の両端にあるベッドを選択するのが吉です。

さあ、あとは船旅の黄金パターン【荷物を放り込んで>>大浴場で長風呂を満喫して>>お酒とおつまみで一人打ち上げしながら>>ゆっくり旅の記録整理】です。うーん、最高だ!!みなさん、船旅は本当に良いですよー!

エピローグ~旅のまとめ&おまけ~

旅の2日目は、<総距離約110km、獲得標高約1,000m、実走行時間5時間30分>という結果でした。実質的には山口を縦断していますので山口旅の一つの指標になりますね。

おまけ程度に、大阪帰港後の様子です。唯一印象的な出来事だったのは、この年の台風21号で大阪港の人道橋が破壊されてしまい、フェリーからターミナルまでが観光バス移動だったこと。そしてバスの待ち時間20分、乗車時間2分、というかつてない非効率な移動に…。トラックなどと一緒に徒歩下船でも一向にかまわなかったのですが。

はい、大阪40km、2時間。これといった工夫もなく、まっすぐお家に帰った結果ですね。


それでは、旅の総まとめを。

<旅の感想>
・取れなかった夏休みを秋に振り替えた3泊4日の自転車旅。この長さは貴重。
旅の直前に「自転車旅人を装う脱走犯が山口県で捕まる」という業界にとってセンセーショナルな事件があったけど、特に怪しまれなくてよかった(笑)。
・山口県のコンテンツ力は思っていたよりもすごい。自然も歴史もすべて余計な現代の成分が少なくて「旅」がしっかり味わえる。
・個人的にこれで大阪からの九州航路を制覇。フェリー旅は外せないものに。

<旅の反省>
インスタ化された景色の場所はきまって観光地化されていて「旅」としての満足度や到達感はいずれも低かった
・夜間走行の装備が貧弱すぎ、地方での夜ライドは灯火類が重要。予備を含んだ装備を検討する。
・日本史に疎すぎ。萩であまりにももったいない思いをした。知って入れば感動できたのに…。

<旅の経費>
・過去旅につき詳細の記録がないけれど…交通費・宿代込みで<約32,000円>
・ちなみにフェリー往復11,760円、宿素泊り4,900円でした。


ということで、ある秋の日に3泊4日の山口旅に行ったお話でした。何度も書きますが、山口県は本当に見どころたくさんで、距離的にも自転車旅に絶好の場所だと思いますよ。

さあ、次はどこへ行きましょうか。

おしまい。

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