<福井>「周山街道」で日本海へ。小浜は夕暮れでヤバイヨヤバイヨ!【ツールド秋休み】

ツールド×旅Life

休日の朝、早くに目が覚めたので「どこか遠くまで走りに行こうか。」となった日のお話。

大阪北摂からのロングだと、とりあえず日本海を目指すルートが引きやすい。城崎・舞鶴・三方五湖・敦賀には過去に行ったことがあるので、今回は福井県の「小浜市」を目指すことにしました。

ルートは以前から気になっていた国道162号線、通称「周山街道」。京都市から福井県の小浜市までの大動脈であり、かつての「鯖街道」と呼ばれる道のひとつです。

オートバイのツーリングでは鉄板の道なんですが、ロードバイクのルートとしてはあまり情報がありません。むしろ交通量と道幅のバランスで自転車向きではないという話さえあるので、実際に走って確かめてみたいというのも今回の裏目的です。

出発は少し遅め。拠点となる「さくらであい館」に着いたのが午前10時ごろ。予定では150kmコースになるはずなので、ここから7時間は見積もっておかないといけません。順調に走っても17時に小浜着、とすると今日は夕暮れとの戦いになりそうな予感。

であい館が便利なのはサイクリストの補給食が充実しているところ。ここでバナナとパンを買ってスタートです。

まずは、桂川のサイクリングロード沿いにまっすぐ嵐山まで。ここまではノンストレス。いいウォーミングアップになりますね。

コロナ禍も落ち着いたのか、嵐山には人があふれています。紅葉はまだですがこの人出、ハイシーズンになると自転車では走りにくくなりそうですね。

さて、メインはここから。嵐山・嵯峨野から北東に進路をとって、国道162号線「周山街道」にアクセスします。

自転車では入れない有料道路「高雄ドライブウェイ」のゲートを横目に、ここから小浜までの一本道を走っていきましょう。

山間の谷間を走る周山街道は、それほど大きなアップダウンもなく意外にとても走りやすいルート。事前情報にあった自動車の幅寄せ等もなく、快適に進みます。

山を一つ二つ越えて、京北(けいほく)ゾーンに入りました。ちょうどお昼の時間帯なので、この道の駅「ウッディー京北」で昼食と休憩をとることにしよう。

自転車を置く場所を探していると、2人組の欧米人サイクリスト(以下、サ)に出会いました。うーん、やっぱり外国の方とロードバイクはよく似合う!

お二人が私の青いサーベロ君を見ながら何やら母国語?で会話をされていたので、勇気をもって「こんにちは!」(あくまで日本語で)と声をかけてみたら、「こんにちは。綺麗なロードバイクですね!」と流暢な日本語が返ってきました。

私「これからどこへ行かれるんですか?」
サ「今から花背峠を越えて、高島へ帰ります。」
私「ハードですね。気を付けてくださいね。」
サ「あなたはどこへ行かれますか?」
私「私は、このまま福井県まで行く予定です。」
サ「お互い気を付けて走りましょう。いってらっしゃい!」

サイクリスト同士だと、外国の方ともあまり緊張せずにお話ができますね。なにかちょっと嬉しくなった瞬間でした。

ということで、お昼は「京北うどんと炊き込みご飯」のランチをいただきました。素朴で優しい山の味が心と体を温めてくれます。ここで体力を回復して、先を急ぎましょう。

周山街道はまだまだ続く。こうやって見ると京北は意外と都会。街道に沿ってお洒落なカフェやパン屋さんが並んでいるので、お昼やレストには道の駅以外の選択肢も多そうですね。

個人的に鉱物マニアな私は「マンガン記念館」に惹かれますが…、ここは先を急ぎます。

山越えの際には小さな峠があったり、森の中を抜ける道だったり。変化に富んだ街道は走りごたえがあります。

そうか、ここに出るのか!となったのが「道の駅 美山ふれあい広場」

ここは有名な「美山かやぶきの里」に行くときには必ず立ち寄る場所。いつもは亀岡から府道19号線沿いにやってくるので新鮮です。ここには多くのローディーとバイカーがたむろしていました。

ハイエースにロードを積み込み、ここを拠点にサイクリングをする人たちもいて、さながら山間部ライドのターミナルのような場所になっています。

ここは美山の牛乳で作った新鮮なソフトクリームで有名なんですが、さすがに秋の山は肌寒かったので今回はパス。ここでは水分だけを補給して出発です。

えーと、福井県までの距離が知りたいんですが…。

最も近いのが「北極点」で5,950kmって、自転車でどのくらいかかるんでしょうね。

美山を流れる「棚野川」。というのはあとで調べてわかったこと。

とにかく素敵な「橋と川と集落」の構図だったので、思わず写真タイム。地元の方にとっては何気ないいつもの風景なんでしょうが、旅人はこういうのに弱いんですよ。

県境の「堀越峠」を登り切って、「堀越トンネル」を抜けたら、とうとう福井県に突入!!ここまでで約100km、小浜市まではあと30km程度です。

ここからはながーーい下り基調なので、しっかり脚休めをしておきましょう。

福井県の入り口、ひらがなで「おおい町」。ここのマークは北斗七星みたいですね。脇に輝く8つめの星を探してしまうのは、北斗の拳世代の証。(笑)

死兆星が見えないところ、私の旅は安全に終わりを迎えることができそうです。

こういうシルエットが撮れるということは、日が傾いてきた証拠。のこり20kmですが、急がないと日が暮れてしまうので、がんばってペダルを回します。

とうとう小浜市に入りました。あとはこの「南川」を下っていくと、自動的に「小浜湾」にでるという寸法。

さすがにここまでくると距離と時間が読めるので、心にも余裕が出てきます。大阪から7時間、今回は読み通りの行程だ。

ついに、国道162号線「周山街道」を制覇!!

ここが京都へ鯖を運んだ道の終着…いや始発点なんですね。ただの道標ですが旅人にとっては感慨深い標識です。

夕暮れ前の「小浜湾」。いつもながら漁船の密集感が大好きな私。港と漁船は私の旅のマストアイテムです。このゴール感が素敵ですね。

時間は17時。小浜の魚介類を夕食に、と思っていたんですが、フィッシャーマンズワーフはちょうど閉店時間。そうか、こういう施設の営業時間を侮っていた…。

ダメもとで、向かいにある「若狭小浜おさかなセンター」に立ち寄ってみると…。

「お食事・喫茶 ミスティ」というお洒落な名前に似つかない純和風の店構えの食堂が。これってまさか営業中!?

店内は見たところ空っぽ。おそるおそる「ごめんくださーい。やってますかー!?」と声をかけると、奥のほうから「やってますよー」と嬉しい返事が!

ちょうど昼と夜の間だったので、奥で仕込みをされていた様子。それにしても懐かしい昭和の食堂の内装です。メニューも往年の日本の正しい食堂のそれ。

せっかく福井県に来たので、ここは「ソースカツ丼」を注文。生姜焼き用の厚切りのスライスを厚めの衣で揚げて、自家製のソースだれをかける福井県スタイルは、お店によって味が違うらしい。

美味しい食事に舌鼓を打ちながら、ご主人と奥さんと3人でしばし談笑。大阪から自転車できたことを話すとかなりびっくりされた様子。今日の行程のあれこれを話し、小浜のあれこれを聞く、旅先で出会う人たちとの気兼ねないコミュニケーションは先になっても素敵な思い出として残ります。

思いのほか食堂で長く過ごしちゃったので、お店をでたらすでに夕暮れどき。山あいに沈む夕陽が美しい。今日も長い旅だったなあ…。

東の空にはすでに月が昇ってきています。明るくきれいな満月は夕暮れ時の空でも十分な存在感を放っています。

小浜のゴールはこの「マーメイド像」と決めていました。

小浜に伝わる人魚伝説、正しくは「八百比丘尼(やおびくに)」伝説。人魚の肉を食べた少女が不老不死になってしまい、800歳まで生きながら尼僧として活動した、という少し悲しいお話。

ここで写真を撮って、一旦旅を終えるわけですが、問題はここから。

本来であれば、夕暮れを迎える前に小浜を発って、国道307号線、もうひとつの「鯖街道」を抜け、滋賀県は近江今津から「湖西線」で大阪へ輪行する計画だったのですが…

あああぁぁ!!ライトのバッテリーが切れそうだ!!! これはヤバイヨ、ヤバイヨ!!!

ここは計画を大きく変更せざるを得ません。ライトのない峠越えなんて危険すぎる…!

こうなると、自走での山越えを諦めて、JR小浜線を使って敦賀まで行って、敦賀からサンダーバードで輪行するのが妥当ですね。

JR小浜線のダイヤはかなり間隔があいているので、いけるところまでは線路に沿って自走していくことにします。

で、ダイヤを気にしながら線路伝いに走ってたどりついたのが「JR大鳥羽駅」。見てのとおりの無人駅でした。

誰もいないホーム。線路の前後も真っ暗闇。

大阪ではまず見ない光景、私のほかに乗客がいないというシチュエーションは、はたしてダイヤどおりに電車が来てくれるのかという不安さえ感じさせます。

唯一明かりのある待合室でバイクをばらして「輪行」スタイルに。

良かった!ダイヤ通りに電車が来てくれました。

私的には珍しい「ワンマン」の車両。2両編成でのワンマン運行なので、出入り口が決まっていることを知らなかった私。もたもたしていたらマイクで「一両目から乗車してくださーい。」とアナウンスが。

19時過ぎに無事に「敦賀」へ到着。ここからはサンダーバードで快適に帰阪しよう…と思ったら、ダメ押しのトラブル。どうやら大阪の路線で事故があったらしく、サンダーバードが一時運休

ダイヤは40分遅れ、かつ今まで北陸で乗車できずにいた人が一斉に乗って来たことで、まさに満員電車状態。連結部に立ち乗りスタイルかつ迷惑な輪行袋付きで1時間30分の乗車というオチがしっかりついてきたのです。

ゴールの小浜以降で大きく予定が狂っちゃいましたが、「小浜まで周山街道を走る」という主目的は達成。暗闇のライドと地方路線への乗車も旅人としてはいい経験でした。

大阪から小浜まで総行程145km、獲得標高1,200m、実走行時間6時間40分という日帰り旅になりました。

帰りを輪行と割り切ると、大阪からでも日帰りで日本海までいくつかルートが引けてしまうのが嬉しいところですね。そして「周山街道」は前情報ほど危険でもなく、むしろ走りやすい道でした。ロングライドが好きな人にはぜひおすすめですよ。

…というのが、ある秋の日帰り旅の記録でした。

めでたし、めでたし。

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