霧と嵐の「乗鞍エコーライン」へ!【ツールド秋休み】乗鞍編(その1)

ツールド×旅Life

プロローグ

”世の中には六甲山より高い、自転車で上がれる山があるらしい。”
という話を聞いたら、やはり行かずにはいられない。

ロードバイクに乗っていなかったら「山へ行く」なんてことはなかっただろうなあ。
なんて改めて思います。

今回の目的地は【乗鞍岳】。標高は2,700m超!自転車で行ける【国内最高峰】。
ヒルクライムは得意ではないけれど、登りきるだけの走力はついているハズ。
せっかくなので、高地の景色も堪能したいので、思い切って1泊2日の旅を計画したのです。

初めての中部地方への遠征。関西から東はまったく土地勘がないので下調べが重要です。
交通手段はナビを頼りに自家用車を選択。バイクを荷室に詰めた自動車輪行で行くことに。

ルートとしては、名神高速から東海北陸道に乗り換えて高山方面を目指す。岐阜県側の【乗鞍スカイライン】を自転車で登って最高峰の【畳平】へ。
所要時間は車で4時間、自転車で2時間くらいを見込んでおきましょう。それではレッツゴー!

…とハンドルを握っていると携帯が鳴る。今晩宿泊予定の【乗鞍白雲荘】さんからだ!?

え!?昨日からの雨で【乗鞍スカイライン】が通行止め!?「今日、どうされますか?」って。
折角休みをとって行程を組んだので、できればあきらめたくない。
まだ手段はあるはず…。

さて、【乗鞍岳】は岐阜県と長野県にまたがる大きな山です。
今回は大阪から近い岐阜県側から【乗鞍スカイライン】を走って山頂を目指す行程でしたが、ここがアウト。ほかの手段としては長野県側に回り込んで【乗鞍エコーライン】を登って山頂を目指すことが可能。
お宿の方に確認すると、長野側の【エコーライン】は通行可とのこと。

「だったら、行きます!チェックイン遅くなるかもしれませんが、スイマセン!」
ということで+2時間を使って、長野への旅が始まりました。

となると、名神高速→東名高速→中央自動車道→長野自動車道、と都合4つの高速道路を乗り換えて、延々の自動車旅。本来ならもうついてるだろうに…と思いながらも、乗鞍に上るためには受け入れないといけません。

途中。高速のSAで食事をとりつつ、スマホで現地の天気予報を見ながらドキドキ。
この「曇り」予報ってどっちにもとれるので本当に心配です。

1日目 雨の乗鞍エコーラインを往く

大阪を出て約6時間(!)、ようやくスタート地点に到着。
ここは【乗鞍観光センター】…であることが、なんとか確認できるくらいの霧。または霞。

ほらー、小雨ふってんじゃん。あと寒いよ…。

長野県松本市、乗鞍岳のふもと。ここですでに標高は1,500m!。どうりで寒いに加えて少し息苦しいわけだ。すでに空気が薄い。

しかし情報によると【乗鞍エコーライン】は通行可能。そのためにここに来たんだから、引き返すという選択肢はありません。車を観光センターの隅っこに駐車して、小雨に濡れながらバイクを組み立てます。

今日は【畳平】にある【乗鞍白雲荘】さんに宿をとっているので、着替えなどの宿泊セットも必要。このころはバイクパッキングはまだブーム前なので、リュックに詰め込みます。

乗鞍エコーラインの入口には有人ゲートがあって、ここで出入りのチェックをしています。
この日は雨。おそるおそる受付員さんに「自転車いけますか?」と聞くと「大丈夫だけど、時間的に難しいかなあ…」と。どうやら18時にはゲートが閉まってしまう様子。

ちなみにこの時15時だったので、単純に行って帰るなら時間も厳しかったのですが、幸いにして今日は頂上泊。畳平に宿をとっていることを伝え、堂々のスタートです。

憧れの乗鞍岳。ブログや大会写真などで見た絶景をイメージしてたんですが、この日はこのとおり。
雨は幸いにして小雨なので、しっとり濡れてくるくらいですが、惜しいのはやはり霧がかって視界が良くないこと。前日にそれなりに降っていたようなので路面にも落ち葉が散らばったりと、ベストな状況ではありません。

そして何よりパワーが出ない。というか息切れがすごい
というのも、やはり標高1,500mからのスタート。そこから一気に2,700mまで駆け上がるので、どんどん空気が薄くなります。酸素って大切なんだ…と実感しながら無理せずゆっくりペダルを回します。

畳平までの距離は大体20km。獲得標高としては約1,200upなので斜度はそんなにきつくはありません。ただ、やはり視界が良くないので単調なクライムになってしまいます。あと、背中のリュックが地味に体力をうばう。背中に想い荷物を背負うと、ライド姿勢が制限されてキツイ。

とかなんとか独り言を入れつつ登っていくと、雲の流れが速いことに気が付きました。
この感じ、うまくいけば晴れるタイミングもあったりして…なんて思っていると…

晴れた!?
ほんの一時的にですが、山並みが見えるくらいに視界が開けました。

「おおー!」と感嘆の声が漏れる。気づけば周りを囲んでいた針葉樹林がなくなっています。
これが【森林限界】というやつか!
心なしか黄色や赤に染まりかけてもいるので、少し早いけれど紅葉が訪れつつあるようです。

これで一気にテンション&モチベーションがアップ!あの頂を目指してもうひと踏ん張りだ!
…と気合を入れた矢先、バイクがまっすぐ進まない…??

「風」です。霧を晴らしてくれた風が、森林限界を超えたところで容赦なく自分に襲いかかる。
苦しい呼吸と相まって、この風の壁を超えるパワーが出ない…

仕方なくところどころバイクを押し歩いて進みます。これで平均速度がぐっと落ちる。
加えて日没が近づきつつあります。こんな街灯もない山道が真っ暗になったら…そういえば熊も出るわけだし…。など不安は絶えませんが、とにかく頂上を目指すしかありません。

ときどきタクシーや観光バスが私を追い越していきますが、乗客が気の毒そうな目で私を見ています。
雨風にさらされて自転車を押し歩く旅人ですもんね(笑)

畳平にとうちゃーく!!…とか言ってられない事態。

登れば登るほど遮蔽物はなくなり、風は強まるばかり。そしてほぼ真っ暗…いや真っ白??
あれだ【ホワイトアウト】ってやつに近い。
とにかく畳平付近では視界はほぼなく、ぼんやりした明かりを目標にして、かつ風でぶっ飛んでいくバイクを地面に押さえつけながら進むしかありませんでした。

思えば最後の1kmが一番長く過酷だった…
【乗鞍白雲荘】の看板が見えた時にどれだけほっとしたことか。
結局、観光センターから2時間半くらいかかっての到着です。

「ごめんください。####です。遅くなってすいません。」と、ずぶぬれの恰好でチェックイン。
お宿の方も電話でやりとりしたものの、この天候でほんとに自転車で来るとは思っていなかったようでビックリされてました。

ここは【乗鞍白雲荘】さん。畳平に位置するおしゃれで広々した山小屋ロッジです。
HPの写真に魅せられて予約しましたが、なんとも温かみがあるそれは素敵なお宿です。
この日は平日でしたが、私のほかはすべて登山の方々。ご年配のお仲間が数グループご一緒でした。

さて、自転車は風で飛んでいかないようアドバイスを受けてデッキの柱に括り付けて、まずは着替えて夕食です。

う…美味い!!
夕食はなんと【飛騨牛】のすき焼き。まさか山小屋でこんな贅沢料理を出していただけるとは。
なにしろ、ヒルクライム(半分くらい徒歩)でヘトヘトの体にとっては、すべてのメニューが染みます。白雲荘さんありがとう!!

ところで、ここは標高2,700m。電気ガス水道は市街地のように整備されていません。
食料や飲料もふもとから運んでこないと手に入らないので、生活に関するあらゆるものに感謝しないといけません。

その最たるものが「お風呂」です。ここでは雨水を利用するため水のある時期にしかお風呂は入れません。この日は本当にラッキーで「お風呂がある日」でした。
お風呂の前には大きな張り紙があるのですが「お風呂は水がある時期のぜいたくです」。うん、まったくそのとおりだ。

そんな贅沢なお風呂をいただきます。冷え切った体に熱いお湯が染みわたる!!さいこうだー!

お風呂のあとは、ゆっくり荷物整理とベッドメイク。
お部屋は2段ベッドのドミトリー形式です。相部屋でハイカーのおじさま3人と私。という組み合わせ。

やはりこんなところまでやってくるサイクリストが珍しいので、気さくに色々話しかけていただきました。荷物を整理しながら、あれやこれやお話しするのですが、旅先でのこういうコミュニケーションは大好きです。

そろそろ時間は21時。ちょうど発電機が止まるとき=消灯の時間なので、ここからはトイレに行くにも懐中電灯が必要になります。

おなかいっぱい。体もぽかぽか。おふとんはふかふか。明かりが落ちると…お休みタイムですね。
いつもよりかなり早い時間帯ですが、登山のみなさんは朝が早いのでこれがベスト。

そして私にもある野望があるので、迷わず午後9時就寝です。おやすみなさい☆

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